2017年5月1日月曜日

あなたはそれを虐待だと思いますか?④

「この犬種はこういう姿かたちをしているのが正しい」とされる【スタンダード】が必要な理由もあるのだ・・・ということはお解りいただけたと思います。

けれどもその理由の正当性については賛否がわかれるところでしょうし、私自身首をかしげたくなる理由の方が多いと思っています。

今回の様にニュースで取り上げられるとわたしたちはつい感情的になって

「ひどい飼い主だ!可哀相じゃないか!虐待だ!」

と言ってしまいます。実際可哀相ですものね。

けれども実際に、今もなおニュースにすらならず、ごく当たり前に犬たちに施されている似たようなことがあることも、目を背けることなくきちんと知っておかなくてはなりません。

たとえば断尾や断耳について。

【断尾ってなに?】
文字通り、しっぽを切り落として短くしてしまうことです。
多くは赤ちゃんの時にブリーダーさんが切り落としてしまうため、飼い主さんの手元に来るときには既に断尾された状態です。
もしかすると、ご自身の飼っているワンちゃんが、実はしっぽを切り落とされて現在の姿になっていると知らない飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんね。

断尾をする理由は以下のようなものです。

<歴史的背景>
昔、ヨーロッパでは、断尾することで狂犬病にかかりにくくなったり、背筋が強くなったり、瞬発力が増加すると信じられていたようです。
ネズミ捕りや狩猟目的に飼われていた犬たちは、そういう闘いの場面で有利になったり怪我を予防するためにしっぽを切り落とされるのが慣習化していました。
イギリスでは、ジョージ王朝時代の一時期、しっぽのついた犬には課税されたこともあって、非常に多くの犬種が断尾の対象になっていました。
後にこの税制は廃止されましたが、なぜか断尾の慣習だけは残ってしまいました。

<予防医学的理由>
狩猟犬はやぶの中に入って行ったりするため、長いしっぽがひっかかったり当たったりして傷つく可能性が高いということから断尾の必要があるという人々もいます。
また、しっぽは排泄器官に近いため、衛生状態を保つ上でも断尾が有効と考える人もいます。

<外見的理由>
例の【スタンダード】です。
この【スタンダード】に規定されている容姿が、そもそも断尾を前提としている犬種がなんとおよそ50種もいるのです!

シュナウザーやピンシャー、コッカースパニエルなどの、あの小さくてピクピク動く可愛らしいしっぽは、生まれながらの形では決してなく、人間の手によって切り落とされた結果だということです。

20080420 LunaHallett
見慣れたシュナウザーのこの尻尾も断尾の結果です。
(※ウィキベディアより参考画像)

【断耳ってなに?】
耳の一部を切り落とすことです。
断尾と同じく、大抵は赤ちゃんの時にブリーダーさんに耳を切り落とされることが多いです。

断耳をする理由には以下のようなものが挙げられます。

<歴史的背景>
ブルベイティングやベアベイティングという言葉をご存じでしょうか?
昔、今のように動物愛護の考え方がなかった時代、人々は余興として牛や熊に犬をけしかけて闘わせ、それを見物して愉しむという、現代人からみれば野蛮極まりないことを行っていました。
(ブルドッグをはじめとする”ブル”がつく名前の犬種はみな、この悪趣味な余興のために人間が作り出した犬種です。顔がペチャンコになっているのは、牛や熊に長い時間振り落とされずに咬みつき続けることができるためなのです。)

ブルベイティングやベアベイティング、闘犬といった人間の余興に使われる犬の多くは耳を噛みちぎられることなく有利に闘いをすすめられるようにと断耳されることが多かったようです。

そしてブルベイティングやベアベイティングはその後動物愛護の観点から禁止されますが、なぜか断耳の習慣はこれまた残ったのですね。(人間ってバカなのかな・・・?)

<予防医学的理由>
断尾と同じく、狩猟犬が植物などに耳をひっかけて致命傷を負わないために断耳すべきという考え方があります。
また、耳が蒸れて細菌が繁殖するのを防げるという理由や、耳の聞こえ方がよくなるといった理由をあげる人々もいます。

<外見的理由>
断尾と同じですね。書いていて腹が立ってきちゃいましたが書かなくちゃ!
ハイ出ましたまた【スタンダード】です。
耳を切り落としていないとこの【スタンダード】である”正しいすがた形”になれない犬種は、シュナウザーやピンシャーをはじめとして10種類以上もいるのです。

European Dobermann
このドーベルマンは断耳と断尾がされていますね。
(※ウィキベディアより参考画像)


※現在ではヨーロッパを中心に、動物愛護の観点から容姿を【スタンダード】に近づける目的での断耳や断尾を禁止している国が数多くあります。そのため、それらの国における【スタンダード】は自然なままの耳やしっぽとなっています。
けれども日本やアメリカでは未だ断耳や断尾が容認されています。


さて、みなさんはどうお感じになりましたか?

しっぽや耳を切り落とされる必然性や合理的理由は感じられるでしょうか?

感じられないとしたらなぜ未だに時代錯誤のようなその習慣が【スタンダード】として残っているのでしょうか・・・

更に、今回ニュースになったジャックラッセルテリアの耳に手術をした飼い主さんを単純に責める資格がわたしたち人間にあるのでしょうか・・・

長くなるので続きは次回にします。

今日はお山におさんぽ。
山で見ると黒ダヌキに見えてしまう”なつ”
安心してください。だからって整形しません