2017年8月1日火曜日

犬のやきもち②

こんにちは。神奈川県 Pet Hotel 11!(ペットホテルワンワン)のお庭番です。

前回のブログにひきつづき、犬のやきもち(嫉妬)について、2014年にカリフォルニア大学サンディエゴ校の心理学者クリスティン・ハリス(Christine Harris)氏のチームが行った実験についてです。


【自分と近いものに嫉妬を感じる】

方法としては、生後6カ月の人間の赤ちゃんを対象とした嫉妬の実験方法を応用しました。

対象となった犬は36匹。
犬種はボストンテリア、ヨークシャーテリア、チワワ、パグ、MIXなど。
実験場所は、それぞれの犬たちが飼われている家庭。

飼い主さんが愛犬を無視した状態で、以下のことをした時の犬の行動をビデオ撮影します。

・犬のぬいぐるみ(クンクン鳴いたり、吠えたり、シッポを振ったりする本物そっくりのもの)を撫でたり優しく話しかけたりする。

・ハロウィンのカボチャに似たバケツを撫でたり優しく話しかけたりする。

・飛び出す絵本を撫でたり優しく話しかけたりする。


犬のぬいぐるみをなでたり優しく話しかけたりしている飼い主を押したり触ったりしたイヌは78%に上りました。

飼い主が同じことをカボチャ型のバケツにしたときに取り乱したのは42%

飛び出す絵本を読んでいるのを気にしたの犬は22%にとどまりました。


特筆すべきは、3分の1近い犬が、飼い主と犬のぬいぐるみとの間に割って入ろうとして、25%がぬいぐるみに噛みついたことです。

ちなみに、バケツ絵本に噛みついた子は1匹だけでした。
(ずいぶん嫉妬深いのね~・・・)

更に、86%の犬が、本物の犬にするのと同じようにぬいぐるみのお尻のにおいをかいだのです!(可愛いですね クスクス)

ハリス氏は、

「犬とそっくりのよそ者を本物の脅威と見なしたようだ」

と推測しています。

当然、ぬいぐるみは本物そっくりではあったものの、明らかに動きも本物の犬とは違いますし、においもないはずですから、この結果は実験者にとっても意外なものだったようです。

この実験結果から、犬が自分の”ライバル”を見定めていることがわかります。

自分の”ライバル”だと思った場合、犬は懸命になって飼い主と”ライバル”との関係を断とうとするのです。


【自分に近い者に嫉妬するのは人間と同じ】

京都大学大学院医学研究科の高橋准教授は、次のようなシナリオを使って、人間の妬みの感情を研究しました。

<被験者>
■主人公(男) 学業は平均的男子大学生、野球部で補欠、貧乏で寮暮らし、恋人なし
■一郎 学業優秀、野球部でエース投手、経済的に豊か、女子学生にモテる
■花子 学業優秀、ソフトボール部でエース投手、経済的に豊か、男子学生からモテる
■並子 学業は平均的、ソフトボール部で補欠、男子から人気なし

この場合、主人公一郎を最も妬ましく思い、次に花子を妬ましく思いました。
並子に対しては妬む理由がないため無関心でした。
”ライバル”とみなしていない上に、自分にとっての脅威とは感じていないんですね。

並子・・・・(もらい泣き)

主人公一郎を最も妬ましいと感じたのは、男子・学生・野球部といった、自分に近い要素が多い、最も似ている存在だったことによるわけです。

逆に、アラブの大富豪に対して、本気でギリギリと嫉妬心を燃やす人は少ないでしょうし、自分より足が速いからといってチーターにライバル心を燃やす人も少ないですよね。

ビバリーヒルズの豪邸の芝生が青いと「ステキ・・・♪」
でも、隣の芝生が青いのは「チックショー!」ってことです。


【犬の嫉妬と人間の嫉妬の違い】

ハリス氏は

「人間と犬は多くの点で異なる。例えば犬が悪さをした後、人間のように罪悪について思い悩むかは疑わしい。また人間は他者の心変わりの意味や、関係が続くかどうかを考え『自分は退屈なのか、魅力がないのか』『もう関係が終わってしまうのか』とあらゆる問いを自分に投げかける」

と語っています。

「人間と犬に種を超えて共通するのはむしろ、慕っている相手とよそ者との触れ合いをやめさせ、関心を取り戻す行動を起こしたいという衝動

で、

「大切な人をライバルに取られたという判断は、こうした衝動を起こすのに十分なのだろう」

としています。

(出典:PLOS ONE


ハリスさんの言っていることをわたしなりに解釈するとこうです。

人間なら、たとえば恋人が他の異性と仲良くしている場面で嫉妬するとき、その胸中は

①恋人を奪おうとする他の異性(脅威と感じている対象)への憎しみ
②恋人の関心を自分よりひいている他の異性への妬み
③自分以外の異性にデレデレしている恋人への怒り(時には憎しみ)
④恋人にとっての圧倒的1位にいられない自分へのいらだちや猛省

みたいなものが複雑に絡み合っている・・・

一方犬たちにあるのは、上記の①と②だけということではないかと感じたのですが、どうでしょう?

①は、犬にとって、飼い主さんの愛を一身に受けている立ち位置を脅かす存在への攻撃ですから、群で暮らす、序列を気にする動物としてはごく単純で本能的なものです。

②は、前々回のブログに書いた実験で判ったとおり、犬には不平等に対する高い感受性があります。
ですから、”飼い主さんから可愛がられる”というご褒美をもらっている別な犬への妬みが起きることも、元来、犬に備わっている感受性によるものです。

けれども、自分以外の犬を可愛がっている飼い主さんへの怒りや憎しみだったり、こうなってしまったことの原因を自分自身の中に探すといった、複雑で、ある意味ひねくれた心の動きや思考は、犬にはないということではないでしょうか。


【人間って面倒くさい】

人間も犬も、群(集団)で協力しあって生きていくというのは共通です。
その群の中では、常に他者と自分を比較して、自分のポジションを気にしていなくてはなりません。

野生動物であれば、群でのポジションを失うことは、下手をすれば獲物にありつくことすらできず、生命にかかわるかもしれないのです。

だから、人間や犬にとって、本能的に群の中での自分の存在意義を高め、ポジションを維持しなくては・・・という焦りにも似た感情は、生来的に切っても切れないものなのでしょう。

確かに、前述の①と②は、犬にも人間にも本能的に備わっている感情によるものですが、③と④は、本能というよりもむしろ人間が頭で考えた理屈が入っているように思えます。

『けしからーん!わたしと愛を誓ったはずの恋人が、わたし以外の異性にデレデレすべきではない!不誠実よ!不潔よ!この嘘つきトンチキ野郎ーー!』

とか

『わたしを裏切らないと誓っていた恋人が他の異性に目移りしているのは、私自身に何か問題があるのかしらん?
最近ちょっと太ったから?それとも最近つまらない冗談に笑ってあげてないから?それともそれとも・・・』

とかいったことは、

『とられちゃうー!ヤダー!』

だとか

『ずる~~い!やめて~~!』

だとかいったストレートな犬の感情よりもずっと理屈っぽいですものね。


前回のブログ

”不公平感”や、”やきもち”による悔しさは、社会的協調を高いレベルまで発達させた人間ならではの複雑なもので、少し前までは人間以外の動物にはないと考えられていました。

と書きました。

けれども実際には、”やきもち”という感情は、人間さまが考えているよりずっと原始的な感情で、群で生活する動物には本能的に備わっているものだということが判ったわけです。

人間はよく、嫉妬心を感じている自分を恥じたり、嫉妬心を理性でコントロールできない人を批判したりします。

でも、もしかすると、恥じるべきは”嫉妬心”そのものではなくて、”やきもち”に、上記の③や④のような七面倒くさい屁理屈を合体させて、シンプルなことをややこしくしてしまっていることかもしれないと感じました。

だいたい、

『嫉妬心という複雑かつ高度な感情は、人間以外には存在し得ないに違いない』

とか言っていた時点で、

『なーにブっこいてんだいっ!嫉妬心なんかボクらにもあるよ!人間なんてそんなに偉かぁ~ないよ!ただ面倒くさいだけじゃ~ん!』

って、犬たちに鼻で笑われちゃってるかもしれませんね。

ひねくれた変化球ではなく、直球で嫉妬を表現する犬たちの可愛げがあれば、人間関係はもっとスッキリといくのかもしれません。

人間も少し、犬たちを見習った方がいいのかもしれませんね。




<今日のPet Hotel 11!>

朝から暑い暑い!早くおうちに帰ろう~!

ハナちゃん、畑のお散歩大好きヨ♪

スタッッッフ~~~!!
雑草生えてるわよーーー!

しょーがない、ワタシが食べておいてあげるわよ!
小春ちゃん!お水を下に置くまで待ってください!
「無理です。待てません!」

ルルたん(はぁと)ぼく、マロンだよ!
ねえねえ、ハナた~ん(はぁと)
マロンくん、ワタシゃ~お婆ちゃんよ。

ボスは男の子だしなぁ・・・
チェッ 可愛いルルたんが帰っちゃった・・・