つづきです。
アレルギーのワンちゃんが増えている②では
赤ちゃんの時にあまりに清潔すぎる環境におかれて、様々な細菌に触れる機会が少ないと、アレルギー反応を引き起こすTh2優勢の状態が続いてしまうからアレルギーになりやすい。
という衛生仮説についてお話しました。
アレルギーのワンちゃんが増えている③では
アレルギーのある人の腸内には、そうでない人の腸内にたくさん生息している善玉菌の一種である乳酸菌が極端に少なく、逆に雑菌群が多く繁殖している。
帝王切開・会陰切開・出産時の抗生物質の使用・人口ミルクなどの多用が、お母さんからの贈り物=大量の乳酸菌が赤ちゃんに届けられる機会をなくしているのではないか?
という腸内細菌環境とアレルギーの関連性についてのお話をしました。
【過ぎたるは及ばざるが如し】
これら2つのお話は、とってもよく似ていると思いませんか?
どちらも、健康や安全や苦痛の軽減を目指して、わたしたちのより快適な暮らしを実現しようとの思いで、医学・化学・薬学を発展させたはずなのに、それが予想もしない副作用をわたしたちの子孫の身体に引き起こしている・・・という、実に皮肉なお話です。
たしかに細菌は怖い。
でも無菌状態にすると細菌への抵抗力が育たず、弱い個体になってしまう。
たしかに分娩は痛みや危険を伴う。
でもその過程を安易にショートカットしたり、清潔を求めすぎて抗生物質を乱用すると、必要な乳酸菌が新生児に届かず、アレルギーになりやすい腸内環境の子供が生まれてしまう。
これって・・・どこかで見た構図のような・・・
あ、そうだそうだ!
火蟻(ヒアリ)vs 犬 その対策と朗報③
でお話したこととよく似ています。
たしかにヒアリは怖い。
でもヒアリを駆逐するためにベイト剤(毒エサ)を乱用すると、ヒアリの天敵になるはずの在来アリまでも死滅させてしまい、結果的に無防備な状態を作ってしまう。
ということですね。
何事もやりすぎは禁物。
過ぎたるは及ばざるが如しということではないでしょうか?
【ステロイド剤】
同様に、アレルギーに対して劇的効果があるステロイド剤についても、過ぎたるは及ばざるが如しと言わざるを得ない部分があります。
ステロイド剤とは、副腎から分泌されているステロイドホルモンを人工的に合成した薬です。
ステロイド剤には様々な作用がありますが、そのひとつは、リンパ球や抗体が働かないようにする免疫抑制・抗アレルギー作用です。
アレルギーというのは、免疫システムに異常が起こって、自分の成分を異物として攻撃したり、本来は危険性のない物質に対して過剰に反応してしまったりする異常過敏反応です。
ステロイド剤を使うことによって、免疫に関わるリンパ球の作用を抑えて、 リンパ球がつくり出す抗体の量を減少させるので、過剰反応が抑えられるというしくみですね。
ところが、都合よくアレルギー反応を起こすリンパ球(Th2)の作用だけを抑制してくれるわけではなく、Th2に対抗してくれるはずのTh1までも抑制してしまうのが困りものなんです。
それによって何が起こるかというと・・・
<いいこと>
■Th2の過剰反応によって起きていたアレルギー反応は封じ込められる。
<困ったこと>
■細菌やウイルスに対する免疫や防御という役割を担っているTh1の作用まで壊滅状態となるため、それらに対する抵抗力が脆弱になって、無防備な状態を作ってしまう。
■ステロイド剤は、原因の根本的な解決には役立たず、単に封じ込めているだけのため、使用をやめればたちまち症状が元に戻ってしまう(封じ込められていた分、急にやめれば爆発的に症状が出てしまう)
■ステロイド剤という劇的な作用をもたらす薬のせいで、様々な副作用が現れる可能性がある。
同じですよねぇ・・・
衛生仮説のお話や、腸内細菌環境のお話、ヒアリのお話と・・・
【Kちゃんのアレルギー】
Pet Hotel 11!のお客様にKちゃんというワンちゃんがいます。
Kちゃんはひどいアレルギー体質です。
そのため、Kちゃんの被毛はところどころ抜けるというよりも皮膚ごとポロポロと剥離してしまっていて毛艶もなく、とても痛々しく見えます。
でも、そんなことが気にならないくらい柔和なお顔をした、たまらなく可愛い子なんです。
お散歩していても、たくさんの人に
『わあ!なんて可愛い子なの?!』
と言っていただきました♪
でも可哀相にKちゃんは、飼い主さんによると
『検査結果を見ると、食べられる食品はほとんどないんです 』
とのことでした。
ですから、なるべくアレルギー症状が出ないようなフードを選んで与え、獣医さんから処方されているお薬を根気よく続けることぐらいしかできないという状態でした。
治療の甲斐あって、Pet Hotel 11!にやってきたとき、Kちゃんのアレルギー症状による痒みと、それに伴うストレスからは解放されていて、お泊りしている間も、とても穏やかなおりこうさんでした。
【Kちゃんの気になる症状】
Kちゃんの滞在中、わたしたちには気になることがありました。
■Kちゃんのお腹がパンパンに膨らんでいて、お座りすると床にくっついてしまうほどだったこと。
■Kちゃんが他のワンちゃんと比べて異常ともいえるほどの量のお水を飲むこと。
■Kちゃんがお散歩の途中、ある時点からガクンと疲れるほど体力がないように見えたこと。
■Kちゃんが、暑くもなく、たいして運動もしていない時にもパンティング(ハアハア)をしていること。
■Kちゃんの食欲が異常なほどあって、自分のごはんを食べ終わっても他の子のごはんを歯を剥いて唸るほどに欲しがること。
そして、色々と調べたところ【クッシング症候群】という言葉に行き当たりました。
【クッシング症候群とは?】
別名を副腎皮質機能亢進症といって、ホルモンの病気です。
自然に生じる場合と、医原性クッシング症候群といって、主にステロイド剤の長期または多量使用によって引き起こされる場合があります。
悪化すると血栓症を起こして呼吸困難になったり、神経症状を起こしたり、突然死の原因になることもあるという怖い病気です。
その症状は、上でお話したKちゃんの症状ととてもよく似ていたんですね。
わたしたちは獣医師ではありませんので、Kちゃんの飼い主さんにそれを伝えるかどうか、とても迷いましたが、結果的にはお泊りの最終日、お迎えに来られた飼い主さんに
『思い過ごしだといいのですが、Kちゃんのお腹の張りなどについて獣医さんからクッシング症候群の可能性を指摘されたことはありませんか?』
と伺ってみました。すると
『いいえ?ありませんが・・・』
長くなるので続きは次回にします。
<今日のPet Hotel 11!>
ペットホテルの自由研究をするという可愛いお客様 マメくんと入れ替わりで本日お帰りです。 将来はPet Hotel 11!のスタッフかな~? また遊びにおいでね(^▽^)/ |
すぐに他のワンたちと仲良くなったマメくん♪ |
暑いんですけど~ 早くプールにお水入れてくらは~い (ハイハイ) |