つづきです。
【適切なワクチン接種の難しさ】
●『何年に1回なら安心』は存在しない
これもまた、イヤんなっちゃいそうなお話なんですが・・・
ワンちゃんのワクチン接種は 1年に1回だろーが、3年に1回だろーが、どっちにしろ結局は安心材料にならないのです。
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
その理由はたとえば・・・
◇ワクチンが不良品かもしれない(←殴る蹴る)
コレ・・・ホントに腹立たしいんですが、稀にあるんです。ほら、信頼ある大手国産食品メーカーですら、ヤキソバに異物が混入してたりってことがあるじゃーないですか?
製薬会社にだって、ワクチンのパッケージ段階やら輸送段階やらで、何らかの不備があって、そういう不良ワクチンがあったりするわけです。
実際、WSAVAも抗体ができない個体がいる原因のひとつとして、このワクチン不良を挙げています。
そして、不良ワクチンかどうかは見た目ではわかんな~い・・・
いやがるワンちゃんを無理矢理獣医さんに連れて行き、痛い出費をしてワクチン接種しても、それが不幸にも不良ワクチンだった場合、実態としてはまったく意味がないことになりますね( ノД`)
◇愛犬がローレスポンダーかもしれない
これもごく稀にですが、ローレスポンダーのワンちゃんもいます。ローレスポンダーというのは、
免疫系が本質的にワクチン抗原を認識できない個体(ワンちゃん)
のことです。
そもそも、ローレスポンダーのワンちゃんにワクチンを接種しても、必要な抗体ができませんから、これまたまったくの無駄ということになります。
最近のドイツの研究で、ロットワイラーには狂犬病ウイルスに対するローレスポンダーの割合が高いということが判っています。
要するに、ワクチンを接種することが大事なんではなくて、接種したワクチンが効いているか? ってことが大事なんですね。
●本当に必要なのは・・・
そういうことを色々と考え併せていくと、ワンちゃんの健康のために本当に必要なのは、
『ワクチンは〇年毎に接種をするべき』
というお約束ではなくて、
『根拠のない既定の間隔に縛られず、愛犬に最適なタイミングでワクチン接種すべき』
だということが解りますね!
考えてみればトーゼンのことなのに、つい情報に振り回されていたわたしたち・・・
ウッカリしてたぜいっ!!
じゃあ、自分の愛犬に合った最適なワクチン接種のタイミングは、どうすれば判るか?
簡単です。
◇毎年、健康診断を兼ねて獣医さんに行き、抗体価検査をしてもらーう。
◇抗体価検査ですべての感染症の抗体が陽性ならワクチン接種はしなーい。
◇抗体価が足りない感染症のワクチンだけを接種してもらーう。
たったコレだけです!
2015年版のWSAVA ワクチネーションガイドラインでも、抗体価検査の重要性について、ちゃーんと強調されています。
まさに、コレこそが根拠に基づいた=エビデンス・ベースドのワクチン接種ってことになりますよね?!
こうすることで、ワンちゃんのワクチン接種による副作用などのリスクや体の負担を減らしてあげることができます。
更に、前回接種したワクチンが万が一不良ワクチンだったり、ワンちゃんがローレスポンダーだったりしても、抗体価検査で判明するわけです。
あーよかったよかった♪
これで解決~ぅ!
すんごい納得感!
なんで気づかなかったのかしらぁ~?
ヤンヤヤンヤ~~♪
ところが・・・・!
そうは問屋が卸さないんですよ、奥さん・・・
●詰め合わせセットの悲劇
このシリーズの最初のブログで、
混合ワクチンは”ワクチンの詰め合わせセット”
だとお話しましたね。
現在、日本で入手可能なワクチン(狂犬病以外)は、製薬会社にもよりますが例えば以下のような感じです。
-----------
1種ワクチン : パルボ
2種混合ワクチン : ジステンバー、パルボ
3種混合ワクチン : ジステンバー、アデノⅠ、アデノⅡ
4種混合ワクチン : 3種+パラインフルエンザ
5種混合ワクチン : 4種+パルボ
6種混合ワクチン : 5種+レプトスピラ1種
7種混合ワクチン : 5種+レプトスピラ2種
8種混合ワクチン : 7種+コロナ
9種混合ワクチン : 8種+対応するレプトスピラが増える
-----------
例えば、年に1回の健康診断時にワンちゃんの抗体価検査をしてもらったとします。
愛犬には、コアワクチンしか接種するつもりがない飼い主さんだったとして・・・
抗体価検査の結果、アデノⅡの抗体価値のみが足りなかったとすると・・・
どうします?どれをお注射してもらいますか?
ジステンバーもパルボも十分すぎるほどの数値だから必要ない。いやむしろ、打ちたくない!
なのに、足りないアデノⅡだけが入ったワクチン製剤がない?!
仕方なく3種を選ぶか・・・それともアデノⅡを捨てるか・・・
悩みますよねぇ~~?!
ミニサラダだけが食べたいのに、
『お客さま~?ミニサラダはランチセットにしかついておりません』
みたいな・・・
サクマドロップのハッカ味を1粒だけ食べたいのに、1缶買わないとダメみたいな・・・
いやいや、それどころじゃーありません。
ワクチンの場合は、副作用のリスクがあるんですからね。
上記に書いた混合ワクチンの種類は、よっぽど品ぞろえのいい獣医さんの場合で・・・
実際には取引のある製薬会社にもよりますので、中には
『うちは5種以上の混合ワクチンしか置いてないよ』
といった動物病院もあります(トホホ・・・コース料理しかないのかよ~う)
●アラカルトにしてよ!
ワクチンは、セットだけじゃなくてアラカルトにしてくれれば、抗体価検査をして本当に必要なワクチンだけを必要に応じて接種できるのに・・・
って、思いませんか?
実際、ワンちゃんの健康を第一に考えたら、その方法がもっとも確実で安全なんです。
足りない分だけ接種する・・・シンプルでいいぢゃないですかー!
そんなことはもう獣医さんだって製薬メーカーだって、厚労省だって、とーっくの昔から知ってるはずのことなんです!!
けれども実際にすべてのワンちゃんの飼い主さんが、抗体価検査をして足りなかった分だけを接種する・・・
ということになった場合、製薬メーカーとしては・・・
必要なワクチンの種類や数の予測が立たなくなる。
↓
生産しても売れ残る商品がたくさん出てしまう。
↓
結果的に生産をやめてしまう。または受注生産ですっごく高くなる。
・・・というようなことが起こる可能性がありますね。
もし、そんなことになったら、必要な時に必要なワクチンが入手できない!
ということだってあるかもしれません。
『アデノですかぁ~・・・受注生産なので来年になりますねぇ~。それと、1回5万円になりま~す』
というような感じでしょーか?
●だからか・・・
ダラダラと書いてきましたが、まとめます。
日本におけるワンちゃんのワクチン接種が、相変わらず見直されることなく、毎年1回という風習にのっとって行われているのは、以下のような理由によるのでは?と個人的に思っているのです。
◇海外に倣って3年に1回にしても明確な根拠が示せない。矛盾が生じてしまう。
◇3年ごと接種にした場合、もしも不良ワクチンなどの理由で抗体ができていなかった場合、長期にわたってワンちゃんをリスクに晒すことになる。
◇抗体価検査の結果に応じたワクチン接種にするのは理想的。でも実際にはワクチンの安定供給や適正価格の実現が困難になる(それによって苦情などを生むかもしれない)
こういった、実に悩ましい問題が山積しているために、
国は・・・
『そもそも狂犬病以外は義務ではないのだから、あえて国の方針として獣医師会に提言などして責任を負う必要はない。今まで通り自己判断・自己責任でいいじゃ~ん』
製薬会社は・・・
『なるべくたくさん売れればそれでイイ。副作用で犬が病気になれば更に別な薬が売れるのでなおさらイイ♪』(←ガルルル~)
と・・・残念ながら、そういうことなんじゃないのかなぁ・・・と思います。
さて、悩ましい問題や腹立たしいことだらけではありますが、頭抱えてたって愛犬は幸せになりません。
では現時点で、わたしたちが愛犬のためにできることは一体なんなのでしょう?
そのあたりのお話を次回させていただこうと思います。
<今日のPet Hotel 11!>
クンクントレイン♪ |
海斗くんとはのんちゃんは、随分気が合うみたい |
海斗くん、お帰りだよ~! 「ええ~~ 帰っちゃうの~~~?」 |
見送るウリくんの後ろ姿 肉球カワイイ(笑) |
海斗くん。お泊り頑張ったね!また遊びにおいでね~! |
いっぱい走り回って・・・ |
涼しいお部屋で休憩♪ |
内緒ばなしかな? |