一昨日、京都府宇治市で鹿を襲っているところを目撃されたシェパードらしき野犬は、この記事を書いている今現在、まだ捕獲されたというニュースは目にしていません。
さて、昨日の記事のつづきです。
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京都市の動物愛護センターによる、犬の引取頭数・殺処分件数が共に、昨年度に目に見えて減っている。
譲渡件数には大きな変化は見られないので、殺処分頭数が激減したのは、引取件数自体が激減したことに連動しているだけに見える。
注目すべきは、昨年度の【飼主の放棄】による引取件数が激減していることです。
これは何を意味するのか?
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・・・ってところまで書きました。
【飼主の放棄】による引取件数が激減した理由は単純で、保健所(いろいろな呼び方がありますが、便宜上ここでは”保健所”と書きます)が、持ち込んだ犬(猫)の引き取りを拒否するようになったからです。
平成25年9月の動物愛護法の改正によって、保健所は以下のような引取りを拒否できるようになりました。(管轄により差はあるかと思います)
●動物取扱業者から引き取りを依頼された場合
●繰り返し引き取りを依頼された場合
●繁殖制限指導に応じない場合
●犬・猫の高齢や病気を理由とする場合
●犬・猫の飼養が困難と認められない理由の場合
●新たな飼い主を探す取り組みをしていない場合
ですから、【飼い主の放棄】について言えば、それまでは保健所に連れて行くとほぼ無条件で引き取ってくれていたものが、例えば
『親戚や知人や動物愛護団体に相談したり、新聞や情報誌などで呼びかけたりして譲渡する努力をしてください』
と言われたりして、すんなりとは受け入れてもらえなくなったのですね。
これは、飼い主の【終生飼養】の責任を重視したものです。
本来、飼い主が最後まで責任を持って面倒を見るべきペットなのですから、飼えなくなった時には当然、そういった譲渡のための努力義務を果たさせなくてはならない・・・ということです。
まったくもって正論中の正論です。
ただ・・・保健所に飼い犬を連れて行く人の何割が、そのように諭されて保健所から引取を拒否されたからといって、懸命に譲渡先を探すのか・・・
はなはだ疑問だとは思いませんか?
最初から、保健所に飼い犬を連れて行けば数日後には殺処分になることを知って持ち込んでいる人が多いわけです。
譲渡先を探す努力をする人はとっくにそうしていると考えるのが普通ではないでしょうか?
【飼育放棄】する飼い主が一定数いるとして、保健所がそれを拒否することによって大幅に引取件数を減らせば、そりゃあ保健所での殺処分頭数は減るでしょう。
けれども、
そこであぶれた子たちはどうなっているの?どこへ行っちゃったの?
という疑問が湧きますよね?
恐らくは、人里離れた山奥に捨てられたり、引き取り屋という、お金を受け取って犬を引き取る業者に引き渡されたりする子の数が増えただけではないでしょうか。
引き取り屋は、引き取ることで利益を得る業者です。ですから、引き取った後で可愛がって育てるという前提はそもそもありません。
狭い犬舎にぎゅうぎゅう詰めにして、ロクにごはんもあげず、病気になっても放置され、ただただ倉庫に収納された荷物のように死を待つばかりの過酷な運命がそこには待っています。
そして、山に捨てられた子たちは・・・今回、京都で目撃されたシェパードらしき野犬のように、野生化して生きるために必死で捕食しながら暮らしていますし、その力のない子は当然死んでしまいます。
保健所に収容され、数日で殺処分にされるのがよいとは決して思いません。
けれども、単に引取件数を減らしても、本来の目的を果たせていないという意味で、完全に片手落ちだと言わざるを得ません。
同じ水量の水が流れている川の一部でいきなり川幅を狭くしたら、行き場を無くした水は消滅するのではなくあふれ出してしまうだけだということに、行政が気づいて手を打ってくれることを願ってやみません。
今回、鹿を襲ったシェパードらしき野犬が、もしも人の手によって遺棄された子だったとして・・・
その子が万一人間の子供を襲うようなことになれば大変なことです。
殺処分件数を減らすために引取制限をした結果として、山に捨てられて野生化する犬が増え、それが人間の子供を襲うとなれば、事態はむしろ悪くなっているように思えるのですが、どうでしょうか・・・
最後に・・・
今回のニュースの画像を見る限り、シェパードに限りなく近いので、わたし個人は、その野犬が現在のような生活を送るに至った過程には、なんらか人の手が介入している可能性が高いと考えました。
元々、近隣の山に住んでいたノイヌの群だった場合、交雑を繰り返しているため、もっとなんというか・・・中庸的な外見になるような気がしたからです。
写真だけではわかりませんが、せいぜい1代前が人間に飼われていて捨てられたなり・・・と勝手に想像したわけですね。
更に、映り方かもしれませんが、なんとなく・・・この野犬、妊娠しているようにも見え、それもわたしをより、複雑な気持ちにさせるのかもしれません。
人間の身勝手で野犬になってしまって、生きるために必死なだけなのに、その人間に捕獲されたらもしかすると殺処分になってしまうかもしれないのだな・・・
という感情と、
お腹に赤ちゃんがいるとしたら、危険を冒してでも人里に下りて鹿を、そしてもしかすると人間をも襲ったって不思議はないだろうな・・・
という感情が合わさり、人間の身勝手さに嫌気がさすような気持ちでいたのです。
けれども、ブログを読んでくださった方から、
『都会では見かけなくなったが、田舎にはまだ野犬の群はいますよ』
というコメントをSNSでいただきました。
なるほど・・・確かに、件のシェパードのような野犬が、元々ノイヌである可能性は捨てきれませんね。
いずれ、経緯については想像にすぎませんから、あまり決めつけるのはよしましょう・・・と冷静に思いました。
ご指摘いただき、ありがとうございました。