この実験を行ったオーストリアのウィーン獣医科大学が行った実験で、犬の社会性に関する面白い実験がもうひとつありますので、そちらもご紹介しておきますね。
【犬は不公平な扱いをされるとイジける】
まず最初の実験は2008年にウィーン獣医科大学で29匹のイヌを対象に行われました。
<実験①>
隣り合った2匹の犬に「オテ」をさせます。
どちらの犬も同じように「オテ」をしたにもかかわらず、一方にはご褒美(エサ)をあげて、もう一方にはあげません。
すると、ご褒美をもらえなかった方の犬は、すぐに「オテ」をしなくなり、その上実験者(人間)から顔をそらすようにまでなりました。
<実験②>
実験①と同様に、隣り合った2匹の犬に「オテ」をさせます。
今回は、どちらの犬にもご褒美を与えますが、その質が異なります。
一方はソーセージで、研究チームはこれを”豪華なご褒美”と位置付けています。
もう一方はパン。チームはこれを”内容の劣るご褒美”と位置付けています。
すると、パンをもらっている方が「オテ」をしなくなるわけではなかったため、研究チームは
『報酬の質には犬はあまりこだわらない』
という結論を出しました。
上記の実験で、少なくとも犬は、不公平な扱いをされることによって、自分より好待遇を受けている犬がいるとモチベーションが下がるということ。
そして、不当な扱いをした相手(この場合は実験者)に対して不平不満を感じるということが判りました。
(出典:AFP)
でも・・・
この<実験②>の結論には、個人的に疑問を感じていました。
ソーセージもパンも、そこそこワンちゃんが喜ぶご褒美だと思ったのです。
わたしだったら・・・うーんそうですね・・・
ステーキとキャベツぐらいの差をつけるかなぁ。
そうなった時のキャベツを出された方のワンちゃんの反応も、この時の結果と同じになるだろーか・・・
などと想像を巡らせていたら、この実験にはまだ続編がありました。
今月(2017年7月)になって、同じくウィーン獣医科大学で、次のような実験が行われたのです。
【犬とオオカミを対象とした不公平に関する実験】
●自分だけがご褒美をもらえないと、指示されたことをしなくなる
今回の実験も、隣り合った相手と同じことを要求されている犬が、ご褒美に差をつけられるという形式です。
今回要求されるのは「オテ」ではなく、ボタンを交互に押すというものです。
一方がご褒美をもらえて、もう一方がご褒美をもらえなかった場合は、前回同様、ご褒美をもらえなかった方は、すぐにボタンを押さなくなりました。
●自分のご褒美の質が他の犬より劣ると、早々と指示に従わなくなる
今回、具体的にどのような”品質の差”をつけたのかがよく解らなかったのは残念でしたが、結果は前回とは違う結果になったようです。
(きっと、ステーキとキャベツにしたに違いない・・・←筆者の完全なる妄想ですので無視しましょう)
つまり、”内容の劣るご褒美”をもらった方の犬は、”豪華なご褒美”をもらった方の犬に比べて、早期にボタンを押すことをやめてしまったのですね。
うんうん、ナットクという感じがします。
●隣に比較対象がいない状態で同じことをさせると・・・
上記の”内容の劣るご褒美”を用いて、隣に比較対象の犬がいない状態で行ってみたわけですね。
この場合は、喜んでボタンを押し続けたそうです。
すごいですね。人間と同じですねぇ~!
太郎くんは、トイレ掃除をするとママに100円もらえるので、喜んでトイレ掃除をしていました。
ところが!太郎くんのお姉ちゃんは、同じようにトイレ掃除をして1000円もらっていたことが判明しました。
太郎くんはその不公平感にイジけて、きっとお姉ちゃんを妬み、ママに不信感を感じ、そして、
『意地でもトイレ掃除なんかするかーーいっ!』
となってしまうことでしょう。
なんなら、腹いせにいつもより多めにオシッコを飛び散らせちゃうかもしれません(やめてやめて~~!)
この実験で、犬が集団における自分の立ち位置を意識していること、他の犬と自分を比較して、妬んだり、ひがんだり、嫉妬したりといった、不公平に対する高度な感受性を持っていることが判ります。
●同じ実験をオオカミでも行った理由とその結果
今回の実験では、あえて犬だけでなくオオカミにも全く同じ内容の実験を行っています。
なぜオオカミにも同じ実験をしたかというと・・・
犬の、不公平に対する高度な感受性が、
もともと犬という動物に備わっているものなのか?はたまた、人間に帰属することによって育まれたものなのか?
ということを調べるためです。
結論として、オオカミも犬とまったく同じように、ご褒美をもらえなかったり、相手より劣るご褒美を与えられたりした時には、ボタンを押すことを拒否しました。
このことから、犬が感じる不公平感という実に人間らしい高度な感覚は、もともと犬に備わっているものだということが判ったのですね。
●不公平な扱いをした実験者への対応は?
上記の実験を行った後で、不当な扱いを受けたがわの犬およびオオカミが、不当な扱いをした人間(実験者)に対して、どのような態度をとるか?
ということを観察したそうです。
コレ、興味ぶかいですよね~~!
特に多頭飼いの飼い主さんは、気を付けていたって、どうしても全部のワンちゃんに不公平感を抱かせないようにするのは至難の業でしょうから・・・
さて、結果は・・・
オオカミは不当な扱いをした実験者に近づかなくなり、無視しました!
『ざけんなよバーロー!オレ様をバカにしやがって~!』
という感じでしょうか・・・(←筆者の妄想にすぎません)
ところが犬は・・・不当な扱いをした実験者に対して、顔をそらすといった行動は見られたものの、近づかなくなったり、無視するようなことはありませんでした。
ここが、犬とオオカミの大きな違いです。
同じように、不公平な扱いに対して不満を抱いているはずの犬とオオカミなのに、犬の方が実験者に対して”寛容”だったのですね。
この、犬の寛容さこそ、人間と犬が今のようなスペシャルな関係になった理由のひとつと考えられるかもしれません。
(出典:Science News)
不平等感を嫌悪するという気持ちは、妬み・嫉み・不満などといった感情ですが、これと隣同士にあるような感情として、”やきもち” がありますね。
ついでなので、次回は犬の”やきもち”について書いてみたいと思います。
<今日のPet Hotel 11!>
ルンルンル~ン♪ 人間の子供がスキップしているかのようなマロンくん |
暑いから浅いプールで足を冷やしたよ! |
マロンくん「冷たくて気持ちいい~~♪」 |
お水ギライな”なつ”も珍しく恍惚の表情 |
あれ?”なつ”もう出るの~?一緒に遊ぼうよー! |
「いや、ボスさん・・・ちょっとはしゃぎすぎ・・・」 マロンくん ドン引き(;'∀') |
ボクはプールなんかしない。インドア派なんだ。 誰も邪魔しないでよ! 「ハイハイ。あずきくん。ゆっくりしてていいからね~!」 |