前回、犬には飼い主さんに対してだけでなく、犬仲間に対する”絆意識”や”仲間意識”がある。だから、仲間の死を悼む感情を持っている。
・・・というお話をしました。
今回は、そのことを実証した、興味深い実験のお話です。
【犬は仲間の犬にエサを分け与える】
実験は、オーストリアのウィーン獣医科大学で行われ、イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」で発表されました。
過去の動物研究において、人間に近い霊長類とネズミとカラスは、飢えている仲間にエサを分け与える行動が見られるということが判っています。
意外なことに、犬についてはこういった実験がされてこなかったのですね。
今回の実験は、16匹の犬で検証したものです。
<実験①>
研究対象の犬の前に、エサの入ったトレイと空っぽのトレイを用意します。
どちらのトレイにも紐がついていて、犬はその紐を咥えてトレイを運ぶことができます。
すぐそばに、エサを与えられずお腹を空かせてオリの中に閉じこめられている犬がいます。
そうして、研究対象の犬がどうするか?を観察するといった実験です。
興味深いですね~!!
結果は・・・
オリの中でエサを欲しがって「ワンワン」吠えている仲間が”知り合いの犬”だった場合、研究対象の犬の大半が、エサの入った方のトレイを仲間のところに運んでいったのです。
一方、エサを欲しがって吠えているのが”見知らぬ犬”だった場合は、エサを運んであげる犬もいましたが、その頻度は相手が”知り合いの犬”だった場合よりグっと低くなりました。
この実験では、仲間の犬にエサを運んであげても研究対象の犬にはご褒美は出ませんでした。
つまり、犬は自分への見返りがなくても、仲間に対して献身的な行動をとるということが証明されたわけですね。
研究対象の犬は、完全な自由意志において
「あ、友達がお腹を空かせているな・・・お?!こうすれば友達はエサを食べられるのか!よぅし、エサをあげよう!」
と動いているってことなんです。
かしこすばらしい~~~!!
<実験②>
実験①で、”知り合いの犬”にはほとんどの犬がエサをあげたのに、相手が”見知らぬ犬”だった場合はエサをあげる頻度が落ちましたね?
研究チームは、その理由が以下のようなことかもしれないと考えました。
「”見知らぬ犬”に恐怖心を感じていて、エサを運んでやらないのかもしれない・・・」
つまり、研究対象の犬は、お腹を空かせている”見知らぬ犬”にもエサを運んでやりたいと思っているのだけど、相手がどういうヤツだかわからないから怯えて運んで行けないという可能性もあると考えたわけですね。
そこで、この実験②では、あえて
『仲間にエサを運んであげると自分がご褒美がもらえる』
という条件に変更しました。
すると、実験対象の犬は、喜んで”見知らぬ犬”にもエサを運んでいきました。
つまり実験①で、”知り合いの犬”にだけエサを運んであげた子は、”見知らぬ犬”を怖がって近づいていかなかったのではなく、単に”知り合いの犬”に対して特別な”絆”を感じているからこそ、特別扱いをして献身的な行動を取ったということが判ったのです。
言い換えれば、”見知らぬ犬”に対してはさほど”仲間意識”がないために、ご褒美でももらえない限り、献身的な行動を取らなかったと・・・
興味深いですねぇ~~!
【ふたつの実験で判ったこと】
●犬は、なんの見返りがなくても、友達には献身的な行動をとる。
●犬には間違いなく”仲間意識”があって、仲間と認めた相手には特別な”絆”を感じている。
(出典:Science Daily
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151216082345.htm)
【おやつがなくても・・・】
この実験結果をみて、犬同士の献身的な絆に感動するとともに、ひとつのことに気づきました。
わたしたちは、長い間、人間に特別友好的な犬という動物とは、親しい友情関係にあります。
その友情関係の中で、犬がいかに賢く、社会性が高いかということは解っているはずです。
にもかかわらず、どこかで上記の実験で立証されたような、犬たちの高い社会性を低く見積もっているということはないでしょうか?
例えば、しつけをする時に、ご褒美としてやたらとおやつを与えているといったことはないですか?
それは、どこか
「犬は、おやつ欲しさにコマンドを覚えるものだ」
とタカとくくっている気持ちの表れのようにも感じます。
もちろん、おやつ欲しさにコマンドを覚えても、飼い主さんを喜ばせようと思ってコマンドを覚えても、結果は同じかもしれませんし、おやつで釣った方が話が早いのかもしれません。
けれども、
「何が何でも、とにかく早くこのコマンドを覚えさせたい」
というコマンド(マテとか、イケナイ、コイ といった安全を左右するコマンド)以外のしつけに際しては、トレーニングの時間そのものが、飼い主さんとワンちゃんの絆をより深める貴重な時間として考えた方がいいのかもしれません。
つまり、エサで釣るといった、ある意味ワンちゃんを小馬鹿にしたようなやり方ではなく、少しくらい時間がかかっても、
「飼い主さんが喜ぶことをやってあげたい!」
というワンちゃん自身の自由選択による献身的な気持ちを引き出すようなやり方です。
だって・・・
わたしたち人間が、まさにそうではありませんか?
例えば仕事。
高給や好待遇などといった即物的なニンジンを鼻先にぶら下げられたら、もちろんそのために人は仕事を頑張るでしょう。
でも、実はそういったものよりも、
『プロジェクトで一緒に頑張っている仲間のために!』
とか
『いつもよくしてくれているお客様の喜ぶ顔が見たいから!』
とか
『大事な家族のしあわせのために!』
といった、仲間に対する献身的な気持ちから自発的に行う仕事の方が、より高いモチベーションを保って取り組めるのではないでしょうか?
上記の実験結果は、ワンちゃんにも人間のそういった動機付けと同種のものが確かにあるということを証明しているのだと感じました。
犬を舐めることなかれ・・・
わたしは、この実験結果を見て、今後のワンちゃんたちとの関わり方の大きなヒントをもらったように感じました。
みなさんは、どのように感じましたか?
<今日のPet Hotel 11!>
あずきくん、また遊びに来てくれました♪ |
ここはボクんちなんだから、邪魔しないでね! ハイハイ |
まだ1歳のマロンくんは何にでも興味津々! |
フンフンなるほど・・・クンクン・・・ |
暑いからお部屋にボール持ってきて 早くボクに投げてくださ~い! |
ワタシはここでこーやってるから 早くコッチ来てナデナデしてくださ~い! 犬は献身的なはずじゃあ・・・( ノД`) |