2017年5月6日土曜日

サマーカットは誰のため?

本日、見学にいらしたお客様。
可愛らしい真っ黒な毛並みのポメラニアンをお連れでした。
ご利用は来月末から1か月余り。

「お預かり期間が長いので、ブラッシングや適時シャンプーなどのグルーミングはさせていただきますね」

とお話すると

「あ、でも連れてくる前にサマーカットにしてしまうつもりなのでブラッシングは大丈夫です」

と仰いました。

だんだんと気温が上がってくる今の時期、ワンちゃんをサマーカットにする飼い主さんはたくさんいらっしゃいます。
バリカンで毛刈りするサマーカットは、見た目にもサッパリして涼し気ですね。

飼い主さんは少しでも真夏の暑さから愛犬を守ってあげたいという優しさからサマーカットを選択されると思います。

でも・・・!
そのサマーカット、本当にワンちゃんのためになっているのでしょうか?
というお話をしたいと思います。


以下は、あくまでも私が信じている、サマーカットをあまり推奨しない説の理由です。
違う説もありますので、あくまでご判断は飼い主さんご自身の責任にてお願いいたします。


【毛刈りするとかえって暑い!】

犬は人間のように汗で体温調節できません。
そのため、舌を出してハァハァすることで体温調節していることはご存じですね?
ハァハァ以外にも、犬の体温調節にとても大切な役割を果たしているのが被毛なんです。

住宅の断熱材をご存じでしょうか?
綿みたいな素材のものや、発泡スチロール素材のものがありますが、共通しているのは空気をたくさん含んでいるということです。
空気の層が、夏の暑さも冬の寒さも防いでくれるというわけです。

犬の被毛も同じように、フワフワした被毛に空気をたくさん含むことによって、寒さはもちろん暑さをも防いでいるのです。

そのため、毛足の長いワンちゃんの場合、上から飼い主さんが触ってみてとても熱いと感じても、本犬さんの体温は、バリカンで刈られたワンちゃんよりも上昇していません。

毛むくじゃらの羊さんたち。毛刈りしていますよね?
あの毛で羊さんたちが暑いのだとしたら、真夏は毛刈りしてスッキリしているはずです。
けれども日本で羊の毛刈りをするのは3月~5月ごろ。真夏にはちゃーんと被毛が伸びているようにするんです。
飼い主さんたちが、暑さ対策に被毛が重要だと知っているからなんですね。

フサフサの真っ白な毛並みが美しいサモエドというワンちゃんがいます。原産はシベリアです。シベリアときくと寒そうと思うかもしれませんが、実は冬はマイナス40℃、夏はプラス40℃という寒暖差の極端に大きい地域なんです。
そこで外気温の変化に対応するために、サモエドの被毛はフワッフワというわけです。

※ディスクなどの大会に出るようなワンちゃんで、真夏でも激しいトレーニングをするような子は、特殊な例としてサマーカットが有効とも言われています。


【被毛は外敵刺激から皮膚を守る大切なもの】

犬の皮膚は、人間の皮膚に比べて角質層が薄いので、外からの刺激をモロに受けてしまいます。
皮膚が透けて見えるほどのサマーカットにしてしまうと、夏の強い紫外線が直に皮膚に突き刺さって皮膚を傷めてしまう危険性も高まります。

紫外線の他にも、皮膚を守っている被毛がなくなったことにより、草むらで皮膚を傷つけてしまう危険性や、虫に刺される危険性も高まってしまうんです。


【毛質が変わったり、毛が伸びなくなる子も…】

特にダブルコートのワンちゃんは要注意です。
元はフワフワの毛質だったのが、バリカンでサマーカットに刈り込んだ後、ゴワゴワの毛質になったり、変色した毛が生えてきたリすることもあるのです。

それだけならまだしも、伸びてこなくなってしまうという例もあります。
サマーカットのままだなんて、冬は寒かろうて~~~・・・( ノД`)
部分的に生えなくて、生えムラがなんだか痛々しい感じになる子もいます。

必ずなるってことでもなく、まったく影響を受けない子もいて、原因はよくわかっていません。

ポメラニアンやシェルティーは、特に毛質が変わったり生えてこなかったりする例の多い犬種といわれているので、見学に来られたポメラニアンの飼い主さまにはサマーカットの注意点をお伝えしました。


実は、私の母の飼い犬で、大変気の強い黒いチワックスがいるのですが・・・
(うちで超長期お預かり中の”なつ”ですね)
母は、”なつ”が暑そうだから・・・と、昨夏見事に丸刈りサマーカットにしておりました。

そうしたら、延びてきた毛がなんだかボサボサ・・・?
その上、真っ黒だった背中の毛が、まばらに茶色っぽくなっているのです!!

なんゆーか・・・全体的にワイルドな感じ~?
それはそれでワイルドな彼女の性格に合っているのでまあ構わないのですが・・・
ははは・・・は・・・
ごめんね”なつ”(´;ω;`)

いずれにせよ、諸説ありますので、飼い主さんご自身がお調べになり、信頼できるプロのトリマーさんによくご相談の上、愛犬とどのように夏を乗り切るかお決めになるとよいかと思います。



お迎えを待つロコくんに「遊んで遊んで」のグレートくん

昨夏、サマーカットでツルリンコだった”なつ”
可愛かったからやりたくなるんだけどねぇ~~・・・

ありのままの”なつ”光の加減で背中の真っ黒だった被毛が茶色っぽく・・・
メッシュを入れるなんて、グレてしまったのか?!