2017年9月28日木曜日

怯えから咬むワンちゃん(Kくんの場合)②

こんにちは。神奈川県 Pet Hotel 11!(ペットホテルワンワン)のお庭番です。


前回の記事のつづきです。


【Kくんが抱える問題】


●表面的な問題だけなら簡単


Kくんがうなり声を上げてオオカミになってしまうのは、次のような時です。


自分のケージ・お部屋の隅っこ(角)・物陰などに閉じこもっている時に声をかけたり触ろうとした時。


それ以外の時は、自分の欲求を主張することもなく、他の犬とケンカをすることもなく、むしろまったく手のかからないおりこうさんです。

知らない人と犬がいる、初めての場所に連れてこられたばかりの時は、このような反応を示すワンちゃんはよくいます。

警戒しているし、猫も被っている・・・という感じですね(ニャー♪)


Kくんとの接し方は、表面上だけのことを言えば、

『そういう時に咬まれないように気をつけさえすれば、それでいいんでしょ?』

ということで解決かもしれません。

けれども、そんな風に簡単に考えて、このままの状態を放置しているのは、ちょっとキケンだとわたしは考えています。


●愛着(アタッチメント)が築けないと・・・


Kくんがオオカミに変貌してしまう行動の根底にあるのは、愛着障害だと感じました。

※お庭番は大学で発達心理学を学んでいました。

以前の記事でも触れたことがあるかと思いますが、人間も犬も、集団(群)で生活し、自分を取り巻く周囲の人(犬)と高度なコミュニケーションを取り合う必要がある生き物です。

人や犬の子供にとって、幼少期にしっかりとした愛着形成ができていることが、その後の周囲との関わり方や社会性、情緒面などの成長に必要不可欠なんです。

人間の子供の場合だと・・・

通常は、愛着形成をするべき乳幼児期に母親(主たる養育者のことを便宜上ココでは母親と書きまーす)から無条件に受け入れられ、愛される経験を通して母親との愛着(アタッチメント)を形成していきます。

この愛着(アタッチメント)が子どもの人格形成の基盤となります。

母親との強固な絆(愛着)を築くことができると、赤ちゃんは母親を精神的な【安全基地】だと認識できるようになります。

母親という【安全基地】を確保した赤ちゃんは、母親と繋がっている他の家族 → 母親や家族と親しくしている他の人・・・といった周囲の人々に安心して感心を示すことができるようになります。

同時に、家族とそれ以外の人の区別もつくようになって”人見知り”するようになりますね。

”人見知り”もまた大事な成長過程です。

更に赤ちゃんは、

怖いことがあったら、いつでもママのところ(安全基地)に行って抱っこしてもらえば大丈夫!

・・・と感じるようになり、その安心感と自信からどんどん自分の世界と交流範囲を広げていくようになります。

こうして、愛着形成がうまくいっている子供は、勇気をもって周囲の人々と関われるため、ものすごい勢いで社会性を身に着け、コミュニケーション能力を獲得していくことができるんです。

つまり、愛着(アタッチメント)は子どもの不安を抑制し探索行動を活性化し、 子どもに安心感を与え、自己や他者への信頼感をもたらすものなんですね。

ですから、愛着形成がうまくいっていない子どもは、人格の基盤を築くところでつまずいてしまっているため、様々な能力や資質に影響が出てしまうことが多いんです。

愛着障害の子供には、虐待を受けていた子供やネグレクト(無視)されていた子供が多いのは、そういう理由からなんです。


●Kくんの不安定さ


Kくんは、数日間Pet Hotel 11!に滞在して、普段とは比べ物にならない密度で他のワンちゃんたちと多くの時間を過ごしました。

そのため、他のワンちゃんへのアレルギーレベルの拒否反応は無くなりました。

この変化を、わたしたちのお手柄のように言ってしまうのは簡単ですが、残念ながら実際はそうではありません。

これは、単純に『慣れ』による『マヒ』に他なりません。

その点において、Kくんはある意味、成長したといえるでしょう。


一方で、Kくんが単なる怖がりさんや恥ずかしがり屋さんと違う点は、次のようなところです。

『慣れはするけれど、距離は縮まらない。深まらない』

つまり、他のワンちゃんとも人間とも、関係が育って深まっていくという感じが見られないんです。


Kくんは、初対面の時からわたしに対して甘えてきました。

撫でてやると気持ちよさそうな表情を浮かべ、体のどこを触っても嫌がりませんでした。

そのスタンスは何日滞在していてもまったく変わらないわけです。

ケージや隅っこに入り込んでいる時に話しかけたり触ろうとすると唸るのも、何日滞在していてもまったく変わりません


つまり・・・周囲の人や犬との関わり方に発展性や成長、変化というものがありません。


初めは猫をかぶっておりこうにしていたけれど、慣れてきたら調子に乗ったりワガママが出たりして叱られてシュンとなる・・・

ということもありません。

他のワンちゃんに慣れてきて、じゃれあっているうちにケンカになり、また仲直りして遊ぶ・・・

ということもありません。


Kくんは、最初からずーーっと彼の作ったルールにのっとって行動していて、そこに他者からの影響による変化が見られることはないというわけです。

それは、とても不自然なことだということはお解りいただけるでしょうか・・・



●一匹オオカミ


2~3日一緒にいると、最初はどんなにオドオドビクビクしていたワンちゃんも、次第に心を開いて甘えるようになります。

叱られても『ごめんなさぁい・・・・』と言うようにシュンとなりますが、それで関係が崩れるようなことはありません。

最初は自分のケージに閉じこもっていて、近づくと唸り声をあげていたような子でも、そういう信頼関係ができあがってしまうと、呼べば嬉しそうに来るようになりますし、警戒して唸り声を出すこともなくなります。

けれどもKくんは、いつまでたっても閉じこもっている時に声をかけたり触ろうとしたりすれば、初日と同様に警戒して唸り声を出すのです・・・

それが、Kくんと3年も一緒にいるご家族に対してもそうなのです。


Kくんは、心の底から誰かを信頼しきるということを知らないのだと感じました。

だから、毎日毎日、その瞬間瞬間で、いちいち相手が自分にとって本当に安全な対象かどうかを彼なりの確認作業で見極める・・・という繰り返しをしているのだと思います。

それって・・・Kくんにとってどんなに辛い毎日でしょう!?

実際にはKくんのことを大切に思ってくれている飼い主さんがいるのに、Kくんにはその確信が持てずにいるんです。

怯えたり緊張したりする必要のない場面で、日々いちいち身構えて、まるで天涯孤独の一匹オオカミのように、必死で自分を守ろうとしているんです。

気の休まるヒマがありませんよね・・・


では、Kくんの愛着形成がうまくいかなかったのは誰のせいでしょうか?

飼い主さんの育て方のせいでしょうか?

いいえ。それは違います(キパッ!)


長くなるのでつづきはまた次回にします。



<今日のPet Hotel 11!>


今日も元気いっぱいのコロンちゃん。
「ねえ雨やんだ?ねえお庭まだ?」
まーだだよ~(笑)

「ねえ、なんかイイものないの?オイシイものないの?」
ないよ~(笑)
あ、コロンちゃんの背中にハートマーク出現♪
雨がやんで、ハッピーおじいちゃんもお庭に出てみたよ♪
ヨイショ、ヨイショ・・・
心配そうに見守るコロンちゃん
ボールガジガジガジガジ・・・
一心不乱に・・・かと思ったら・・・
ボスのボールが気になる・・・

気になる・・・
気になるわぁ~~・・・

ダメだ!もうガマンできないっ!(笑)

ハッピーおじいちゃん、よく頑張ったね。
お散歩もよく歩いたね♪
元気でね!また遊びにおいで~(^▽^)