”嫌子を与えている側がエスカレートしてしまう”
という危険性について触れました。
お話の本筋からは少しそれますが、何故エスカレートしてしまうのか?という理由はとても興味深いものですので、ついでにお話ししておきますね。
”嫌子を与える”という言葉自体が少し耳馴染みがないもので解りづらいので、ここではあえて平坦に”罰を与える”という言葉に置き換えてご説明してみます。
前回までの例え話、磯野家の場合で考えていくと・・・
波平はカツオを条件付けしようとしていました。
けれども波平は、実は自分自身が見事にオペラント条件付けされていることに気づいていません。
え?あの波平が・・・?一体誰に・・・?
カツオか?!(←ちがいまーす)
波平は自分自身の経験によってオペラント条件付けされているのです。
これは【成功体験】という風にも言い換えることができます。
過去に波平は、カツオやワカメばかりでなく、サザエにも、会社の部下にも、彼らが望ましくない言動をした時に、叱責などの”罰を与えて”きたと想像できます。
そして、瞬間的に彼らの望ましくない行為をやめさせることに成功したことも何度もあるでしょう。
もしかしたら、
いきなり怒鳴られてビックリしてフリーズしただけかもしれない。
もっとひどく叱られるのがいやで、一時的に反省したフリをしただけかもしれない。
とにかくその場から逃げ出したくて、今やっていたイタズラなどを中断しただけかもしれない。
ともあれ波平にとっては、彼らが望ましくない行為をやめた理由などはどうでもよく、その時、自分の与えた罰によって彼らの”望ましくない行為が中断した”ということに達成感と満足感を抱いたのですね。
「よしよし、ワシが叱ったら効果があったわい」
この波平の【成功体験】は、波平自身にとってのご褒美となります。
つまり、ご褒美をもらうという方法によるオペラント条件付け(好子による条件付け)に他ならないのですね。
この”好子による条件付け”は、罰を与えられるタイプの”嫌子による条件付け”などよりもずっと強力に条件付けされるという研究結果があり、中毒性すらあるのです。
競馬やパチンコといったギャンブル依存症は、1回も当たった経験がない人には起こりません。当然、毎回当たっているという人もいるはずがありません。
ギャンブルというのは、たまに当たるからこそ強化されていく”好子による条件付け”なのです。
10回の内9回はハズレた。でも10回目に当たった。来るぞ来るぞ!また来るぞ~♪
という期待感に突き動かされ、何度ハズレても損しても「次こそは・・・」と執念深く取り組んでしまうから、”好子による条件付け”は強力なのです。
自分が与えた”罰”が功を奏したという波平の【成功体験】も実はそれとまったく同じで、カツオを何回か叱ったうちの1回でもカツオが悪さをやめるというご褒美があれば十分なのです。
このように条件付けされている波平が、イタズラしているカツオを怒鳴ったにも関わらずイタズラをやめなかったような場合・・・
波平はまるで競馬にハズれた人のように「今度こそ今度こそは!」と、どんどん声を大きく、口調を厳しく・・・という風にエスカレートしていってしまうというわけですね。
そして遂に、波平がカツオに手を上げるに至り、その結果カツオが「ごめんなさい」と反省したような態度を取った場合・・・波平の
『ワシが叱ると効果がある』
という”好子による条件付け”はますます危険な形で強化されることとなります。
すなわち・・・
『ワシが叱ると効果がある。殴ればもっと効果テキメンだ。』
となってしまう危険性があるんですね。コワイですねぇ~~~!!
このことは、ワンちゃんのしつけに取り組んでいるすべての人、そして子育てや子供の教育、部下の育成などに関わっているすべての人に、ぜひ知っておいていただきたいことです。
ご自身の日ごろの行動を客観的に見て、ついつい他者に対して、とりわけ弱者に対して、相手を自分の意図したように動かしたいと考えた時に、高圧的な態度を取り勝ちだと感じる方は、ご自身が知らぬうちにオペラント条件付けされているのかもしれないということを、立ち止まって考える必要がありそうですね。
私自身、自戒の念も含めて、ちょっと余談になってしまいましたが、今回のお話をしてみました。
あーあ、脱線したまま1回分書いてしまった・・・
ここはどこだろう?
次回までにポイント切り替えしておきまーす(^-^;
「雨でつまんないなぁ~」 |
「つまんないよねぇ~~」 |
「つまんないつまんないつまんなーーーい!」 そうかい?こっちは君たちが羨ましい限りだよ(笑) |