2017年3月2日木曜日

ペットロスを考える⑧(最終回)

愛するペットを亡くして、悲しみの淵から抜け出せずにいる飼い主さんへ

愛犬家の方なら、『虹の橋』という作者不詳の詩をご存じの方が多いかと思います。

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天国の、ほんの少し手前に「虹の橋」と呼ばれるところがあります。

この地上にいる誰かと愛しあっていた動物は、死ぬとそこへ行くのです。

そこには草地や丘があり、彼らはみんなで走り回って遊ぶのです。

食べ物も水もたっぷりあって、お日さまはふりそそぎ、
みんな暖かくて幸せなのです。

病気だった子も年老いていた子も、みんな元気を取り戻し、傷ついていたり不自由なからだになっていた子も、元のからだを取り戻すのです。

・・まるで過ぎた日の夢のように。

みんな幸せで満ち足りているけれど、ひとつだけ不満があるのです。

それは自分にとっての特別な誰かさん、残してきてしまった誰かさんが
ここにいない寂しさのこと・・。

動物たちは、みんな一緒に走り回って遊んでいます。

でも、ある日・・その中の1匹が突然立ち止まり、遠くを見つめます。

その瞳はきらきら輝き、からだは喜びに震えはじめます。

突然その子はみんなから離れ、緑の草の上を走りはじめます。

速く、それは速く、飛ぶように。

あなたを見つけたのです。

あなたとあなたの友は、再会の喜びに固く抱きあいます。

そしてもう二度と離れたりはしないのです。

幸福のキスがあなたの顔に降りそそぎ、あなたの両手は愛する友を優しく愛撫します。

そしてあなたは、信頼にあふれる友の瞳をもう一度のぞき込むのです。

あなたの人生から長い間失われていたけれど、その心からは一日も消えたことのなかったその瞳を。

それからあなたたちは、一緒に「虹の橋」を渡っていくのです・・・。
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素敵な詩ですね。
亡くなった愛犬は、苦しみから解放され、虹の橋で幸せに過ごしている。
そしてそこで私を待っていてくれる・・・
そうイメージすることで、なぐさめられる飼い主さんはたくさんいらっしゃることでしょう。

けれども、そう考えても悲しみが癒えない・・・釈然としない・・・
または、ずっと虹の橋で私を待ち続けている愛犬が可哀相だと感じてしまう・・・

そういう方もまた、実際たくさんいらっしゃいます。

私は『虹の橋』のような、素敵な詩は書けませんので、愛犬リンダや、大好きだった父が亡くなった悲しみから抜け出した時の、自分なりの気持ちの整理の仕方をお伝えしたいと思います。


この世に生を受けた全ての動植物は、その生涯を終えれば消えてなくなってしまうのでしょうか?
私はそうは思いません。

食物連鎖によって被食者となった生き物は、栄養となって命を繋いでいきます。
野に倒れた生き物は、土にかえり、植物の栄養となって、やはり命を繋いでいきます。

つまり、無駄な命がないのとまったく同じく、無駄な死というものもないのだと考えています。

3年前に父を亡くしましたが、
小さい頃に父が私にどのように接していてくれたか?
父の教育や生前に話していたこと
父の物の考え方
などは、間違いなく私に影響を与えています。
見習いたいことはもちろん、反面教師として私の糧になっている部分も含めて、父が亡くなってもその影響は私の中でずっと生き続けています。

大好きだったビーグル犬のリンダについても同じことが言えます。
彼女と過ごした17年間がなければ、今の私はありません。

亡くなった愛する者から受けた影響は、残された人が、たくさんの人や動物に関わることで、いきいきと伝播していきます。
それこそが、「死を無駄にしない」ということではないでしょうか?

私たち家族のために懸命に働き、病との壮絶な闘いの末に亡くなった父や、
私たち家族にたくさんの笑顔や安らぎをもたらして、愛くるしくも健気に小さな犬生を駆け抜けたリンダの一生を、私が塞ぎこみ、閉じこもっていることで”腐敗”させてはいけないと、私は思いました。

父やリンダの一生を、彼らが私に残した影響を、私が残りの人生で出会う人や犬との関りの中で、発酵させ、熟成させていくのが、残された私の役目なのだと感じています。
そうしている限り、父もリンダも私と共に生きています。

亡くなったあなたの健気なワンちゃんの一生を、写真や動画や思い出の中に閉じ込めておかないでください。
ワンちゃんがくれた、喜びや豊かな気持ちといったたくさんの贈り物を、周りの人たちに分け与えて下さい。
更に、あなた自身の人生を前向きに過ごす糧として生かしてあげてください。

それが、愛犬があなたと一緒に生き続けるということだと思います。


おしまいに・・・
私のお話など、張り裂けんばかりのお気持ちのなぐさめになどならないかと思いますが、何かのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

そして・・・どうしても長く塞いだ気持ちから立ち直れずに、日常生活にも支障をきたしているのであれば、ぜひともためらわずに医療機関を受診することもご検討ください。

1日も早く、あなたに笑顔が戻りますように・・・

”なつ” 「もう!早くそこどいてよっ!」
”ボス” 「ちょっと何言ってるかわかんない」