事件があった場所は、赤ちゃんの母親の実家。祖父母の家に預けられている時のことです。
これまでもしばしば母親の実家には訪れていて、今回が赤ちゃんと飼い犬との初対面ではありませんでした。
ところが、ハイハイをはじめたばかりの赤ちゃんが、リビングで祖父母と3人で遊んでいたところ、室内で放し飼いにされていた犬が突然咬み付いたということです。
咬み付いたのは、ゴールデンレトリバー 4歳のオスで、体重約37キロ。
まだ柔らかい赤ちゃんの頭は、ひとたまりもなかったでしょう・・・
そして、一瞬のその出来事に、気の毒なおじいちゃんとおばあちゃんは何もすることはできなかったのでしょう・・・
赤ちゃんの祖父母は警察に「吠えたり咬んだりしない、臆病でおとなしい犬だった」と説明しているそうです。
赤ちゃん、赤ちゃんのお母さん、そして可愛い孫を預かっていたおじいちゃん・おばあちゃん、そして家族同然に暮らしていたゴールデンレトリバー・・・
全員が、とりわけ責任を痛感されているであろうおじいちゃん・おばあちゃんがお気の毒でたまりません。
このような悲しい事件が起きてしまい、この先どのようにお気持ちを整理されるのだろうと考えると、胸が締め付けられる思いです。
つい先日の記事にも書いたように、ゴールデンレトリバーは最も人間の役に立つ使役犬として活躍している犬種です。
つまり、それだけおだやかで従順な犬種といわれています。
そして、とても頭のいい犬種でもあります。
確かに、犬種ごとの特色というのはあります。
けれども、『日本人は全員、几帳面で手先が器用』ってわけではないのと同様に、同じ犬種でも、まったくその犬種の特徴にあてまらない個性をもつワンちゃんもいます。
そしてやはり、私たちが絶対に忘れてはならないこと・・・それは、
【家族の一員であっても、犬は人間ではない。動物である】
という大前提です。
それから、
【犬が本気になったら、人間の大人でさえ噛み殺してしまうことができる】
ということ。
このふたつの現実には、かなり抵抗を覚える愛犬家さんが多いと思いますが、これは犬を飼う者としては常に頭に入れておかねばならない、とても大切なことです。
「愛犬の考えていることは手に取るように解っている」
と仰る飼い主さんでも、愛犬が吠えたり、何かを訴えるように見つめてきたり、普段と変わった行動をした時には
「なんでこんなことしてるんだろうなぁ~?どういう気持ちなの?何が言いたいの?」
と思うことはありませんか?
人間と犬は、同じ瞬間に同じ場所にいても、音の聞こえ方、見える景色、臭いの感じ方など、残念ながらたくさんの違いがあります。
まして、快-不快だったり、怖いと感じること、行動習慣や他者との距離の取り方やコミュニケーションの取り方などに至っては、まったく違います。
愛犬の全てを理解してあげたいと思うことは大変素晴らしいことですが、全てを理解したつもりになることは、非常に危険なことだといつも自分に言い聞かせておく必要があると私は思っています。
全てを解り合えないからこそ、お互いに理解しようと懸命にコミュニケーションをとり続ける・・・それが犬を飼うことの醍醐味でもあります。
事件のお話に戻ります。
この事件を起こしたゴールデンは「臆病な犬」だったと赤ちゃんの祖父母が語っています。
最近では、YouTubeなどの動画サイトで、犬が赤ちゃんをとても上手にあやしたり、まるで母親のように世話をする微笑ましく感動的な様子をたくさん見ることができます。
事実、赤ちゃんの扱いがとても上手な犬は数多くいます。
けれども、すべての犬がそうではないということを忘れないでいただきたいと思います。
この事件同様に、飼い犬が赤ちゃんや子供を襲って怪我をさせたり死亡させる例というのもまた、動画には出回りませんが、現実に起きているのです。
特に、臆病な犬、しかも大型犬を放し飼いにしている家に、か弱い赤ちゃんを連れてくることは大変危険な行為です。
人間に慣れ、きちんと躾をされた飼い犬は、縄張りや主従関係を主張するために攻撃態勢になることはあっても、本気咬みをすることはほとんどありません。
本気咬みをしてしまうケースの多くは、
『恐怖や驚きによって我を失って咬む』または、『運動不足などにより過度にストレスがたまっていて行き場のないエネルギーが放出される形で咬む』
つまり、臆病な犬やストレスが溜まった犬というのは、実は最も注意が必要な犬だということです。
長くなったので明日に続きます。
「撮影なんかいいから早くおさんぽ行こうよぅ~」 「ハイハイ」 |
おさんぽ後、ハルちゃんはおりこうにアンヨを拭いてもらっています |