前回記事からのつづきです。
犬の問題行動の原因を考える際の大前提は次の2つ。
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① 犬には何の落ち度もない。
② 犬が問題行動を起こす原因の多くは飼い主にあるが、原因の全てが飼い主にあるわけではない。
<問題行動の原因>
◇ 飼い主の問題
◇ 犬側の問題(犬にはまったく非がありません)
◇ 飼い主以外のすべての人間の問題
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前回の記事では、
日本における犬の繁殖~販売の現状が 「問題行動の因子を持った子犬」を量産するシステムになっているのではないか?
という事例のひとつめとして、8週令規制がいまだにできないわが国の現状についてお話しました。
きょうは、日本のペットショップで販売される子犬たちの問題行動についてのお話です。
【飼い主以外のすべての人間の責任③】
●ペットショップの生体販売の問題点
ペットショップの生体販売については、このブログでも何度かお話してきました。
主に、生体販売の問題点は「殺処分の温床」という観点で語られていますね。
でも、ペットショップの子犬には、それ以外にも
「健康面に不安がある」
「問題行動を起こしやすい傾向がある」
といった問題も指摘されています。
具体的にそれについて研究したふたつのレポートをご紹介しましょう。
●ペットショップ or ブリーダー
2013年に、獣医師でthe Best Friends Animal Societyの代表 フランク・マクミランと、ペンシルバニア大学の獣医学部のジェームズ・サーペル教授率いる研究チームが、
◇ ペットショップから購入した犬(413頭)
◇ 非営利のブリーダーから取得した犬(5657頭)
を比較して、両者の間にどのような行動特性の違いがあるかについての調査を実施しました。
調査方法は、飼い主にアンケートを取るというもので、サーペル教授が考案した犬行動管理研究アンケート(C-BARQ)が用いられました。
C-BARQは、100項目から成るアンケートで、現在や過去の愛犬の様々な状況に対する反応を、飼い主の観察に基づいて回答していくものです。
集計されたアンケートは、次のような12の行動特性によって判定されます。
調査方法は、飼い主にアンケートを取るというもので、サーペル教授が考案した犬行動管理研究アンケート(C-BARQ)が用いられました。
C-BARQは、100項目から成るアンケートで、現在や過去の愛犬の様々な状況に対する反応を、飼い主の観察に基づいて回答していくものです。
集計されたアンケートは、次のような12の行動特性によって判定されます。
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1 )不慣れな人に対する攻撃性
2 )見知らぬ人に対する怯え
3 )分離不安
4 )家族に対する攻撃性(なわばりの主張)
5 )落ち着きのなさ
6 )生物以外の物に対する怯え
7 )馴染みのない犬に対する怯え
8 )しつけやすさ
9 )見知らぬ犬に対する攻撃性
10)興奮しやすさ
11)愛着と注目を求める行動
12)家の前を通る人に対する攻撃性
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<調査結果>
◇攻撃性に関して、ペットショップで購入した犬はブリーダーから取得した犬に比べて3倍攻撃的行動が多いことが判明しました。
◇ペットショップで購入した犬は見慣れない犬に対する侵略行動(マウンティングなど)を起こす可能性がブリーダーから取得した犬の2倍あることが判りました。
◇もっとも深刻な問題は「怯え」に関するもので、ペットショップで購入した犬は、他の犬や慣れない状況に対する恐怖心が、ブリーダーから入手した犬に比べて非常に高いことが判りました。
◇ペットショップで購入した犬は分離不安に陥る可能性が高く、不安からふれあいを求める傾向も強いことが判りました。
◇ペットショップで購入した犬はしつけが入りにくい(訓練しにくい)傾向にあることも判りました。
◇その他、ペットショップで購入した犬に特徴のある問題行動としては、「興奮しやすい」「注目されたがっている」「脱走癖」「人や物に対してマウンティングや腰を振る行動がある」「家を散らかす」などといったものがありました。
<結論>
ペットショップに並ぶ子犬たちは、生まれてから出荷されるまで鉄製の狭い檻に閉じ込められたパピーミルのような不衛生で不適切な環境に置かれていたケースが多い。
母犬や兄弟犬との適切な早期社会化ができていない上、幼少期に人間との接触や外の世界を経験する機会も与えられず、自分の部屋(テリトリー)を清潔に保つことすらできない状況で育つ。
研究者、特に心理学的な研究に取り組んでいる者は、通常はその研究結果から人々に勧告を行うことはあまりない。
行動というものは非常に流動的で変化しやすいものだと知っているからだ。
けれども、今回のこの研究結果を受けて、我々はペットショップの子犬を不適切な状況から救出し、ブリーダーの子犬との不都合な差異の原因を特定するまでは、やはりペットショップから子犬を購入することを推奨できないと言わざるを得ない。
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●日本とアメリカの比較
ドクター・マクミランとサーペル教授らが行った調査から3年後の2016年、これと同じ手法を使って、日本とアメリカにおける犬の行動特性データを比較した人たちがいます。
調査にあたったのは、日本とアメリカの合同研究チームです。
日本の2789頭(113犬種)とアメリカの10389頭(194犬種)について、それぞれの飼い主に対して「C-BARQ」アンケート調査を行いました。
その結果、日本とアメリカの飼い犬では、次の項目について前提条件が大きくことなることが判りました。
◇平均体重
日本は7kg前後、アメリカは24kg前後で、日本の飼い犬は圧倒的に小型犬が多いこと。
◇入手時の犬の年齢
日本は8週令前後(中には0週令も)、アメリカは12週令前後で、日本の飼い犬は早期に母犬から引き離されている傾向にあること。
◇犬の入手先
日本は ペットショップ40.7%、ブリーダー25.3%
アメリカは、ブリーダー42.4%、シェルター33.6%
で、日本は圧倒的にペットショップから入手している確率が高いこと。
チームは、データに偏りが生じないために、両国に共通する59犬種に絞って、前出の実験と同じ12の行動特性について調べました。
<調査結果>
◇日本の飼い犬は「家族に対する攻撃性」「落ち着きのなさ」「生物以外の物に対する怯え」が特に強いことが判った。
◇オス犬は「不慣れな人に対する攻撃性」「落ち着きのなさ」「見知らぬ犬に対する攻撃性」「興奮しやすさ」の値が高い。
◇不妊手術をしていない犬は「生物以外の物に対する怯え」「馴染みのない犬に対する怯え」「しつけやすさ」の値が高い。
◇犬の体重と「家族に対する攻撃性」には関連性がないが、体重の軽い犬は、「しつけやすさ」を除くすべての項目で高い値を示している。
◇ペットショップで購入した犬は、ブリーダーから取得した犬に比べて「不慣れな人に対する攻撃性」「家族に対する攻撃性」「落ち着きのなさ」「馴染みのない犬に対する怯え」「興奮しやすさ」の値が高い。
◇入手時の年齢が若い(幼い)ほど「不慣れな人に対する攻撃性」「家族に対する攻撃性」「しつけやすさ」「見知らぬ犬に対する攻撃性」「興奮しやすさ」「家の前を通る人に対する攻撃性」の値が高い。
◇特にペットショップで購入された3ヶ月齢以下の犬では「不慣れな人に対する攻撃性」「落ち着きのなさ」「生物以外の物に対する怯え」「馴染みのない犬に対する怯え」「見知らぬ犬に対する攻撃性」がブリーダーから入手した犬よりも高くなる傾向があった。
<結論>
日本では住宅事情の影響もあって、小型犬に極端に人気が集中しており、更にペットショップから子犬を購入する機会が多いため、そういったことが愛犬の問題行動の原因となっている可能性が高いと思われる。
どうやら、ペットショップで小型犬を購入する人が多い日本では、飼い主さんの努力ではどうにもならない類(たぐい)の「問題行動」を抱えた犬たちが多いのかもしれない・・・
という感じがしませんか?
長くなりました。
つづきはまた次回のブログで~~!
<今日のPet Hotel 11!>
”なつ”は今朝未明に吐いたので獣医さんに・・・ 結果はたいしたことなくて、夕方には元気いっぱい。 お夕飯も完食しました~ (´▽`) ホッ |
いやあ・・・春は体調を崩す子が多いんだよね~ 他人事みたいに言ってるんじゃないわよ>チャコ |
夜になって、飼い主さんから病院への送迎を 緊急要請されたHちゃんは・・・ |
左のホッペ(目の下)から出血。 また外歯瘻でした・・・(-_-;) オペは必要なく、抗生剤のお注射でおうちに 帰れましたとさ♪ |