【犬=所有物という考え方について】
前々回のブログでもお話した通り、たとえば愛犬が事故で負傷したり死亡した場合、最近では「愛犬は家族」という社会通念の変化に応じて慰謝料や治療費の請求が認められるケースが増えてきています。
ただし、法律上はあくまでも
ペット=所有物
という位置づけであることには変わりありません。
そのため、もし慰謝料が認められたとしても、人間が事故に遭った場合と比べるとその金額は非常に低いですし、飼い主側にほんの少しでも過失があれば、それも過失相殺という形で受け取れないことの方が多いのは、前回ブログの判例でよく解りましたね。
「ペットは法的にあくまで所有物なんだけど、飼い主の心の傷に寄り添って考えれば、まあ多少の慰謝料も認めるべきだね」
という判決内容ですね。
こういったことに対してペットの飼い主さんたちからは
「所有物というのは悲しすぎる」
「慰謝料の金額が極端に低いのは、家族だった愛犬を軽く見られているようで辛い」
「法律を改正して所有物ではなく家族だとキチンと認めてほしい」
といった声が上がっています。
わたしも、愛犬を事故で失ったり重傷を負わされたりして
「あなたのペットの時価は〇〇円だから、それで納得しなさい」
なんて言われたら傷口に塩を塗られたような気持ちになるでしょう。
飼い主さんたちは、なにもお金がたくさんほしいのではなく、家族として愛してきたペットの命や、ペットを愛し育んできた時間が軽く見られるということに傷つくんですね。
更に、飼い主さんの心情としては、愛するペットをそのような目に遭わせた人が、ほとんど痛手を負わずにいることにも納得がいかないでしょう。
けれども、残念ながら今のところ現実的に法改正までは難しいのではないかと、個人的には考えています。
そう考える理由は次のとおりです。
少し長いですが、ご一緒に考えてみてください。
●そもそも命はプライスレス
たとえば、
ある人が車を運転中に突然飛び出してきた犬を避けようとしたが間に合わず、犬は死亡。
急ハンドルを切ったドライバーも電柱に激突して死亡してしまった・・・
というような事故が起きた場合、大切な家族を失った双方の遺族の心の傷はどちらも比べられないほど深いものでしょう。
けれどもこのケースの場合、社会通念上ドライバー側の遺族に同情が集まるのが現実です。
恐らく、犬の飼い主は高額の賠償金を支払うよう命じられるでしょうし、世間もそれを妥当だと判断するのではないでしょうか。
そこで議論になるのが、
「命に値段をつけること自体どうなの?」
ってことです。
唯一無二の代替えの効かないものに値段などつけられるはずはありませんね。
慰謝料や賠償金というのは、そのプライスレスなものに敢えて値段をつけることで一応の決着をつける以外に解決方法がないからこそ存在しているものです。
そのため、この議論を突き詰めてしまうと、たいへんな混乱が起きてしまうでしょう。
ある人は「犬の価値が人間の価値より高いなんてあり得ない!」と言い、
ある人は「お宅のバカ息子なんかよりウチのクッキーちゃんの方がよっぽど価値があるわよっ!」なーんて言い、
ある人は「犬と猫だけなんてずるいぞ!ウチのカブトムシのガブリエルだって立派な家族の一員なんだっ!!」と鼻を膨らまし、
ある人は「そもそもペットをお金で売り買いしていること自体が野蛮極まりないわい!」と説教をはじめ・・・
なーんてことになったら収拾がつきません。
●法律のメリット・デメリット
法律っていうのは、こんな風に異なる意見や主義を持つ多くの人たちが暮らす社会の最低限のルールを決めるものなんですね。
ルールや罰則があることは、ある人にとってはいいことでも他の人にとっては窮屈なだけということも考えられます。
そのため、法律はそう簡単に決められないようになっていて、本当にそのルールがたくさんの人にとってより良いものであるかをよくよく考えて作らなくてはならないんです。
また、ひとつルールを設けることによって、それに付随した様々な細則をつけなくてはならなくなります。
たとえば、「ペットは所有物ではなく家族だ」ということに法律で決めたとすると、
「ペットとして妥当な生物は何か?」
哺乳類だけ?鳥類もだよね?両生類は?昆虫は?魚類は?・・・
「妥当な賠償金や慰謝料はいくらぐらい?」
年齢、種類、飼育期間、血統、大きさ、哺乳類かどうか、飼い主さんの思い入れの度合い・・・それらをどう判断する?
などといった問題が出てきますね。
きっと、そんな風にしてどんどん細かくルールを決めてしまうことで、逆に社会通念に即した柔軟な判断・・・いわゆる「血の通った判断」ができなくなってしまうという可能性もあるかもしれません。
ひとつ事例を挙げてみましょう。
つい先日、ひとつの訴訟結果が話題になりました。
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「カリフォルニア州上位裁判所の判事は、3月29日 州内で販売されるコーヒー商品に発がんリスクを警告するラベルを貼るべきとする判断を下した」
カリフォルニア州に拠点を置く毒物に関する教育研究団体(CERT)は2010年、商品に高水準の発がん性化学物質アクリルアミドが含まれていることを消費者に告知していないとして企業を提訴。
コーヒー販売店は州内の消費者にラベル表示でリスクを警告すべきと主張。
被告となったのはスターバックス、ダンキン・ドーナツ、JMスマッカーなど約90社。
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というものです。
訴訟の根拠となっている「プロポジション65」と呼ばれるカリフォルニア州法では
「事業者は、健康を害する物質について"明確で合理的な注意喚起"を消費者に行わなければならない」
となっています。
いい法律ですよね?
でも、この法律が実は大騒動の元になっているんです。
訴訟で問題とされている「アクリルアミド」という成分について、農水省のページを見ると、次のようにあります。
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アクリルアミドは、炭水化物を多く含む原材料を高温(120℃以上)で加熱調理した食品に含まれる可能性があります。
例えば、ポテトチップス、フライドポテトなど、じゃがいもを揚げたスナックや料理、ビスケット、クッキーのように穀類を原材料とする焼き菓子などに、高濃度に含まれていることが報告されています。
コーヒー豆、ほうじ茶葉、煎り麦のように、高温で焙煎した食品にもアクリルアミドが高濃度に含まれていることが報告されています。
アクリルアミドはとても水に溶けやすいため、これらから抽出したコーヒー、ほうじ茶、麦茶などの飲料にもアクリルアミドが含まれていることが確認されています。
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もう・・・がんになってもいいや~(-_-;)
「アクリルアミド」だけではありません。
食品や飲料に含まれるすべての物質を細かく見ていくと、何かしら健康被害のある物質は含まれている可能性が高いですね。
極端なはなし、水だって一度に大量に摂取すれば健康被害があるってもんです。
実際、カリフォルニア州の人々は、この州法に基づいてほとんどの食品に「健康被害の可能性」というラベルがついていることをよーくわかっていて、その表示を気にも留めないそうです。
そうなると、もうこんな法律の意味はまったくないってことになりますよね?
現在、「プロポジション65」は、消費者が商品を選ぶ指針ではなく、単に訴訟を起こす団体や個人、あるいは弁護士のお小遣い稼ぎのための法律だとすら言う人がいるくらいです。
「ペットは所有物ではなく家族だ」
という法律ができることによって、かえって血の通った判決から事務的な判決になってしまう可能性すらあるとわたしは考えています。
そうなれば本末転倒ですし、結局のところ幾ら受け取ったところでペットを失った飼い主の心は癒されないんですよね・・・
もしかすると、上記のような法律ができることによって、極端な人々から
「家族をお金で売り買いするのは非人道的行為で罰せられるべきだ」
だとか
「そもそも家族に首輪をつけたりケージに入れること自体が虐待行為だ」
だとか
「命の重さが平等ならば、蚊やゴキブリを殺しても犯罪にすべきだ」
といった極論が出ることを助長しかねないと、わたしは感じています。
●ペットが死ぬとお金になるという概念
大変悲しいことに、生命保険がある限り世の中から「保険金殺人」はなくならないといわれていますね。
もしも、ペットが亡くなったり重傷を負うと多額の金銭が入ってくる・・・ということになったら何が起きるでしょうか?
・邪魔だからペットを保健所に連れて行こうと考えている人
・動物を虐待することに喜びを感じるような人
・動物嫌いで経済的に困っている人
こういった人たちが、お小遣い稼ぎに動物をわざと事故の被害者に仕立て上げるようなことをしないとも限りません。
●結論
結局のところ、大切なペットが事故に遭ったり事故を起こさないように、飼い主であるわたしたちは、細心の注意を払って「かもしれない飼育」をしていかないとダメだよね~!
ってことに尽きると思います。
ただ、法律の変更まではしなくても「所有物」という被害者感情を逆なでするような呼び名だけはなんとかならないかなぁ・・・という感じがしています。
<今日のPet Hotel 11!>
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今日はお預かりワンちゃんがいないけど・・・ なつ「フンフン」 |
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