コリネバクテリウム・ウルセランス感染症
な~んて長い名前なんだ・・・やってられんぞ!
以下「C. ulcerans(シー・ウルセランス)」と呼びますよ。
先日、ニュースで国内初の感染死亡者が出たと話題になりましたね。
今日はこのC. ulceransについてのお話です。
【敵を知り冷静に対応しよう】
●死亡者が出たのはいつ?
不幸にもC. ulceransに感染して命を落としたのは福岡県の60代の女性でした。
野良猫にエサをあげていたというこの女性は、2016年5月に呼吸困難で救急搬送され、その3日後に亡くなったといいます。
つい最近ニュースになったというだけで、実は2年近く前の出来事だったんですね。
そして、亡くなった女性は医療機関の受診が遅れたことが死に至った一番の原因といわれています。
●何人が感染しているの?
日本で初めてC. ulceransの感染症が報告されたのが2001年のことです。
それ以降、昨年に至るまで同感染症の症例は、亡くなった福岡県の女性を含めて25例です(国立感染症研究所発表)
ほぼ1年にひとりといった頻度でしょうか。
25例の感染者の居住地域を見ると、北海道から九州まで広範囲で、特に地域性はみられないようです。
ちなみに、イギリスでは日本よりも罹患確率が少し高いようで2007年~2013年までの7年間で20例が報告されています。
ペットの屋内飼育が増えているからか、症例の報告義務が徹底されたからかは不明ですが、少ないながらも増加傾向にあるのは確かなようです。
●感染経路は?
犬や猫の他に牛などの哺乳類に感染がみられ、発症していなくても保菌している個体がいます。
国内で報告されている感染患者の多くは犬や猫を多頭飼育しているか、不特定多数の野良猫などにエサやりをしていたようです。
そして、このC. ulceransはどのようにして感染するかというと・・・
飛沫感染です。
つまり、クシャミなどで感染する可能性があるってゆーんですね。
それなのに・・・
●感染を予防するには?
厚労省やニュース報道によると、今回(おととし)の死亡例の発表を受けて、次のように注意喚起しているようです。
「ペットと触合ったら手洗いうがいをする。またペットとは過度な接触をしないように~!」
え・・・でも飛沫感染するんでしょ?
過度な接触なんかしなくたって、屋内飼育しているペットが感染していてクシャミなんかしたらそれで感染しちゃうんじゃあ・・・?
それを避けるにはもう、ペットが鼻水垂らしたりクシャミしたら隔離するしかないんでは?
単純にギモンに感じますよね?
ってゆーか非現実的ぃ~~~~!
・・・ってことで、冷静に調べてみましたヨ。
結論から言うと、個人的には
「騒ぐほどのことではない」
って思いました。
●重症熱性血小板減少症候群(SFTS)との比較
やはり2016年5月~7月にかけて野良猫にエサやりをしていて咬まれた西日本在住の女性(50代)が、およそ10日後に亡くなるという悲しい事故がありましたね。
このニュースを受けて、このブログでもSFTSについて以前書きましたので、詳しくはコチラ↓をご覧いただくとして・・・
ネコ → ヒト感染で死者が出たSFTS 【気を付けるべきこと】①
ネコ → ヒト感染で死者が出たSFTS 【気を付けるべきこと】②
ザックリ大雑把にお話してしまうと、
感染確率や重篤化するリスクはSFTSの方が高く、多くはマダニに咬まれて発症するけれども、たまーに感染している犬や猫に咬まれても発症することがあるよ。
感染方法としては、SFTSは体液からの感染、C. ulceransは飛沫感染だよ。
ということになります。
もうひとつ、特筆すべきことは、いずれの感染症も国内初の動物由来感染での死亡例は
西日本在住、女性、50~60代、野良猫にエサやりしていた
という共通点があるってことです。
●C. ulcerans感染症の症状
呼吸器感染の場合、初期は鼻水、のどの痛み、咳といった風邪に似た症状があります。
重篤化すると呼吸困難などに陥って死に至ることもあります。
また、呼吸器以外(頸部リンパ節腫脹や皮膚病変)といった感染例も報告されています。
ニュースなどでも報じられている通り、ジフテリアと似た症状を呈します。
ペットが感染した場合も、クシャミや鼻水といった症状や皮膚炎などが見られますが、まったく症状がみられないワンちゃん猫ちゃんもいます。
●実は結構いるよ!
平成 20 年度大阪府立公衆衛生研究所年報によると、大阪府が4月~12月にかけて収容したイヌ399頭について培養検査をしたところ、そのうち40 頭からC. ulcerans が検
出されたそうです。
およそ10%の確率です。
つまり・・・
C. ulcerans に感染しているワンちゃんは、実は以前から身近に結構いる
ってーことですね。
●C. ulcerans感染症の現実的な予防法は?
C. ulceransはジフテリアと似た症状だと言いましたが、欧州ではもう「ジフテリア」と同等に扱われています。
まあジフテリアの親戚みたいなもんだって考えておけばいいようです。
そのため、ジフテリアのワクチン(トキソイド)接種で予防が可能と言われています(厚労省による)
その昔、3種混合ワクチンを接種済みの方は、これにジフテリアトキソイドが含まれています。
が・・・20歳くらいでその抗体は切れている可能性が高いので、海外渡航の際は地域によって任意接種しておいた方がいい場合もあるようです。
また、万一感染しても、早めに医療機関を受診することで有効な殺菌治療を受ければ治るということです。
【まとめ】
さて、みなさんはどう感じられましたか?
わたしは
「死亡例も出ていることだし、正しく知って気を付けなくてはならないけれども、それほど神経質になる必要はないよ」
ってことを感じました。
ペットの飼い主さんが具体的に気を付けるべきだと思うのは次のようなことです。
◆具合の悪そうなペットとは過剰接触しない。
(SFTSにペットが感染していても元気な場合は感染力が低いと考えられています)
◆野良ネコなどとの接触には特に気を付ける。
◆ペットと遊んだ後には手を洗う。
◆C. ulcerans感染症がどうしても心配なら、ジフテリアトキソイドのワクチン接種をする。
ま、フツーーのことですね(笑)
どうですか?少しは安心していただけたでしょーか( ̄▽ ̄)
ついでに、ぜひ以下のデータをご覧ください。
-----------
■SFTS感染症(2017年)
発症数 89件 死亡者数 7件
■C. ulcerans感染症
発症数 年間0~4件 死亡者数 16年で1件
■交通事故(2017年)
発生件数 472069件(月平均39339件) 死亡者数 3694人(月平均300人以上)
-----------
ペットのクシャミひとつに神経質になるよりも、おさんぽ時の事故対策として、ワンちゃんにはしっかりとした首輪とリードをつけてあげる方が大事ってことがよーーく解りますね(^▽^)/
■参考■
厚生労働省 コリネバクテリウム・ウルセランス感染症について
国立感染症研究所 Corynebacterium ulceransとジフテリア
<今日のPet Hotel 11!>
雨もあがって地面もだいぶ乾いたから お庭遊びしてイイよ~~! ボーくんは「ワーイ遊んで遊んで~♪」 |
”なつ”はお空のトンビに”眼とばし” |
ボスはキタないボール遊び |
チャコは「もうお部屋に入りた~~い」 ぜんっぜん絡まないのね、アンタたちは(-_-;) |