【不妊去勢手術のメリット(つづき)】
前回のブログでは、
不妊去勢手術をすることによって、性ホルモン作用による問題行動が軽減されるというメリットについて書きました。
今回は、ストレスという観点から、性ホルモン作用による衝動的な欲求について詳しくお話していきたいと思います。
●動物たちの本能
食欲・睡眠欲・性欲 これらは三大欲求といって、すべての動物の本能的な欲求です。
これらの欲求は何のための欲求かというと
『生き延びるための欲求』と『種の子孫を残すための欲求』
なんですね。
わたしたち人間は、動物界の超変わり者ですから、欲求の質が動物とは少し違っていて、特に性欲に関しては特異なのですが、そこを掘り下げることは、今日はいたしません(大門未知子風に)
自分自身が生き延びるためには、栄養と睡眠をとらなくてはならない。
自分たちの種を保存していくためには繁殖しなくてはならない。
あったりまえのことですね。
ですから、これらの欲求に抗うことは、当人にとっては死や滅亡を意味することになるんです。
●抗しがたい欲求
前回のブログで、激しい睡魔と闘う時の苦痛を例に出しました。
その辛さは誰しも経験したことがありますよね?
本能的な欲求を抑制されているのは、動物として極めて不自然な状態に陥っている状態です。
それが耐えがたいほどのストレスになるわけです。
無理に抑え込まれた欲求は、満たされないままどこへいってしまうのでしょう?
攻撃的になったり、走り回ったり遠吠えを繰り返したりして必死でそのはけ口を探すワンちゃんもいるでしょう。
でも、飼い主さんにしてみたらそれらは愛犬の困った行動にしか見えませんから、
「コラッ!ポチ、静かにしなさい!オスワリ!」
な~んて叱られちゃうんですね。
ウ~~~・・・ジリジリジリジリ・・・・・(ストレスマグマが溜まる音)
はけ口すらも塞がれてしまったワンちゃんは、ストレスを体に溜め込んでしまいます。
わたしは、この状態がワンちゃんの心身の健康に良いとはとても思えないのです。
●Pet Hotel 11!での事例
わたしたちのホテルにも、未去勢の男の子はやってきます。
ペットホテルによっては、不妊去勢をしていない子はお断りというところもありますが、ウチは追加料金をいただいた上でお引き受けしています。
何故 追加料金をいただくかというと、そうでない子に比べて未去勢・未避妊のワンちゃんは手もかかるし神経も使うからです。
特に、ウチのようにケージに入れっぱなしにしないペットホテルの場合、未去勢の男の子と未避妊の女の子は接触させないように気を付けなくてはなりません。
女の子がヒート(発情期)になってしまった時などは、お部屋を仕切っていても、すぐ近くにいるわけですから、男の子も女の子も興奮状態になってしまいます。
中には柵を飛び越えてしまう子もいるんですヨ~!(情熱的ぃ~~!)
ですから片時も目が離せません!!
また、興奮のあまり無関係な子にケンカをしかける子もいます(トバッリチね)
止めに入っても 我を失っているのでなかなか大変・・・(-_-;)
そして一番困るのは、その興奮が他のワンちゃんにも伝播して、みーんな大興奮状態になってしまう場合です。
面白いことに、ワンちゃんって誰かが要求吠えでうるさく吠え続けていても、それで他の子が興奮しちゃうってことはないんです。
でも、誰かが興奮して吠えだした時は、たちまちその興奮が群全体に広がります。
言い換えると、性ホルモンによる興奮状態というのは、群全体に大変な緊張状態をもたらすほどの、危機的状態だってことです。
こうなっちゃうともう鎮めるのは至難の業~(;''∀'')
ご近所の方たちは理解して下さっているとはいえ、深夜にその状態になると、いくらなんでもうるさすぎだろーと、慌てて男の子を深夜の長距離散歩に連れ出して、ヘトヘトになるまで歩かせたりしなくてはならないハメに・・・。
また、明らかにお泊り時にヒートになる女の子の予約が入っている場合、やむなく未去勢の大型犬などはお断りしなくてはならないことだってあります。
でも、ケンカの仲裁よりも深夜のお散歩よりも辛いのは、自分を制御できなくなってイライラと苦しそうにしている未去勢の男の子の様子を見ていることなんです。
自分ではどうにもできない衝動とずっと闘い続けている様子は、もらい泣きしてしまうくらいに辛そうなんですね・・・( ノД`)
三浦海岸の海辺で、深夜、男の子のワンちゃんと並んで座って
「オマエも大変だねぇ~」
って話しかけている人がいたら、それはわたしかお料理番かもしれません(笑)
●不自然ですか?
よく、不妊去勢手術をしない理由に
「人間の都合で病気でもない犬に手術をするのは身勝手だし不自然だ。ウチの子には自然な、あるがままの姿でいさせてやりたい」
ということを挙げる方がいらっしゃいます。
それは、ワンちゃんの幸せのためでしょうか?それとも飼い主さんご自身の・・・?
・・・これからお話することは、あくまでわたし個人の考え方としてお読みください。
まず、今の日本では、犬という動物はすべて人間の管理下にいるのが大前提になっています。
野犬や野良犬は、通報されて捕獲されてしまう対象ですからね。
人間の管理下にいる飼い犬は、すでに野生の犬に比べると不自然な状態ともいえます。
その考えを突き詰めていくと、どうなると思いますか?
「そもそも、犬に首輪やリードをつけて閉じこめておくこと自体が不自然で可哀相なことだ。
動物園の動物たちも、水族館のお魚さんも、牧場の子たちも、家庭のペットも、みんな野性にかえしてやるべきだ!」
こういう考えに行きついてしまいます。
実際、このような考え方をしている人たちも世界中に大勢いらっしゃいますね。
でも、ワンちゃんを飼っている人は、きっとそんな風には考えていないでしょう。
では、ワンちゃんの飼い主さんが、自分の愛犬の幸せのためにしてあげるべきことはなんでしょう?
より野性に近い、本能に忠実で自然な生き方をさせてあげることですか?
もしそうだとしたら、広大な敷地で犬たちの群を放し飼いにして、繁殖し放題にさせてあげるのが一番です。
そりゃーとっても楽しそうですけど・・・
そんなことは、ほとんどの日本人には不可能ですよね。
愛犬は家族の一員・・・ということは、紛れもなく人間社会の一員ということですね。
ですからわたしは、飼い主が愛犬の幸せのためにしてあげるべきことは、
『ワンちゃんたちが人間社会の一員として、よりストレスなく快適に過ごせるようにしてあげること』
だと考えているんです。
そのため、実際には繁殖のための交尾を許してもらえないにも関わらず、一生その本能的な欲求を抱え、それに抗う辛さを味わい続けるようなことは、自分の愛犬にはさせたくないという結論に至っているわけです。
要するに、人間社会で人間の家族として暮らしていく上でのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を重視した時に、不妊去勢手術というのはメリットがあるということですね。
次回はこの、ワンちゃんのQOLについて考えてみたいと思います。
<今日のPet Hotel 11!>
くまくんで~~す♪ チワポメの男の子、1才になったばっかりだよ! |
一度、トライアルで来ているからすっかり安心~ |
女の子たちとはすぐにじゃれ合いが始まりました♪ |
( ゚д゚)ハッ! ボスの視線が痛い・・・ |
ボス「あの、それ、ボクの大事な・・・」 くまくん「え?じゃあ取りにくれば~?」 |
ムリ~~~~~~~~~! チーン(合掌) |