2017年12月10日日曜日

ブルドッグの悲劇

こんにちは。神奈川県 Pet Hotel 11!(ペットホテルワンワン)のお庭番です。


前々回のブログでは闘犬のお話をしました。

人間の娯楽のために命をかけて闘うことを強要されている犬たちです。

前回のブログでは軍用犬のお話をしました。

人間のために戦地に駆り出され、命を懸けて働く犬たちです。

いずれも、自分が人間であることを犬たちに謝りたくなるようなお話でした。


気が重いのですが、今日もそんなお話・・・ブルドッグに関するお話をさせてください。


【ブルドッグの悲劇】


●起源


以前にもこのブログで少し触れましたが、そもそもブルドッグという犬種は”ブルベイティング”という人間の娯楽のために生み出された犬種です。

ブルベイティング(bull-baiting)は、13世紀から19世紀にかけての中世ヨーロッパで盛んに行われていた娯楽です。

bullは牛、baitingは前々回のブログで出てきた”ベイトドッグ”のベイトと同じで、餌をやるというような意味です。

杭に繋がれた生きている牛に犬たちをけしかけて咬みつかせ、牛を倒すのを見て楽しむという、まったくもって悪趣味な娯楽ですね(-_-;)

犬たちの生餌となった牛は咬みつかれて苦しみ、当然激しく暴れます。

犬たちの中には、体の大きな牛に振り落とされて怪我をしたり命を落としたりする子もいました。

牛を倒した犬の飼い主には賞金が出たため、人々は競って犬を交配によって品種改良し、ブルベイティングに有利な犬種を作り出しました。

それがブルドッグです。

名前の通り、”ブルベイティングのための犬”ってことですね。

そのため、ブルドッグの外見的特徴は、見事にブルベイティングに適した形になっています。


●ブルベイティングに適した身体的特徴


・マズルが極端に短くて鼻ペチャなのは、牛が暴れてもガッチリと食いついていられるため。

・鼻が上を向いているのは、牛に食らいつき続けたままでも呼吸ができるように。

・上の歯より下の歯が前に突き出したアンダーショットという噛み合わせは、牛に、より強く食らいつけるように。

・ダブダブのセーターのようなたるんだ分厚い皮膚は、牛の角で狙われた時にダヨンダヨンと動くため、外傷はできても内臓まで届くような致命傷を負いにくいため。

・短足で体高が低いのは、牛の角による攻撃をかわしやすくするため。

・首が極端に短いのは、体の重心が前の方にあれば、牛に振り落とされそうになっても身体に遠心力がかかりにくいため。


たったひとつの娯楽に特化した生き物を作り出してしまう人間っていったい・・・

なんともいえない不快な気持ちになるお話ですね。


●ブルドッグが抱える疾患リスク


◆整形外科的疾患


今年、ブラジルにあるサンパウロ大学の研究チームによって、ブルドッグは他の犬種と比較して、歩行時の体の左右にかかる力のバランスがひどく悪いことが判りました。

簡単に言ってしまうと、ヨタヨタと歩いているってことです。

そのため、ブルドッグには他犬種と比べて、股関節・膝関節・肘関節の変形や脱臼、または生まれつきの異形などの罹患率が大変高いのです。


◆呼吸器系の疾患


ブルドッグなどの短頭種はみな、鼻腔が押しつぶされたような形のため、うまく呼吸をすることができません。

そのため、体の熱を逃がすことが苦手で、夏には他の犬種に比べて圧倒的に熱中症のリスクが高い犬種です。

日本の大手航空会社でも、貨物室での短頭種の事故リスクを危惧して、短頭種の機内持ち込みを禁止しています。

常に呼吸が苦しいので、血圧も高めですし、心臓への負担も大きく、心臓疾患も非常に多い犬種です。


◆その他の疾患


上記以外にも、

白内障になる確率が高い。

自己免疫疾患をもっている子が多い。

皮膚疾患になりやすい(シワシワの中が蒸れやすい)

などといった、健康面でのハンデがあります。


●自然分娩できない


ブルベイティングに特化した体型のせいで、ブルドッグはほぼ自然分娩ではなく帝王切開で産まれてきます

先ほどお話したように、ブルドッグは牛に振り払われにくいように体の重心が前方にあります。

つまり頭でっかちで尻すぼみなわけです。

下半身が小さいお母さんが頭でっかちの赤ちゃんを産めますか?産めませんか?どっちなんだいっ?って、中山きんに君の上腕二頭筋に訊いてみてください(←しなくていーでーす)

ああもう・・・想像するだけで色んなところが痛いですね・・・(>_<)

もはや、人間の医療の力を借りなければ出産もできないような体だってことです。


●遺伝的に近すぎる


作り出された目的も、健康面においても不遇としか言いようがないブルドッグに、昨年ついに遺伝学者が警鐘を鳴らしました。

カリフォルニア大学のチームが、100頭以上のブルドッグの遺伝子を調べたところ、この犬種の遺伝子の多様性が極めて低いということが判ったそうです。

遺伝子の多様性が低いっていうのは、遺伝子的に近すぎるってことです。

遺伝子的に近すぎるということは、生物にとって大変キケンです。

環境の変化や天変地異、特定の疫病の大流行・・・みたいなことが起きた時に、同じ人間の中にもいろんな遺伝子を持った人がいることで、人類が一気に滅亡というリスクを減らすことができるんですね。

つまり、種の保存のためには、できるだけ多様性に豊んでいる必要があり、それが自然な形なわけです。


●遺伝学者からの警鐘


もはや自分の力では子どもを産むこともできず、どの個体も遺伝子的に非常に近い状態にあるブルドッグという犬種は、遺伝学者から見ると異常な存在。

そこで、上記 研究チームの代表者は、次のように述べています。

「ブルドッグの不健康な体を作り出した責任者は、特徴的な外見にばかりこだわって犬を繁殖してきたブリーダー、およびそのブリーダーの生計を成り立たせている消費者だ。

ブルドッグという犬種を数々の苦しみから救い出し、遺伝病の少ない健全な身体に戻すためには、もはや他の犬種から血統(遺伝子)を導入するしかないだろう」

要するに、ブルドッグを悲劇から救うためには、他の犬種と交雑させることによって、遺伝的疾患の原因となる劣悪遺伝子を排除する必要があるということです。

そうなれば、ブルドッグの特徴的な外見は変わってしまうことになりますね。

これに対してモーレツに反対しているのが、「純血主義者」と呼ばれる一部のブリーダーや愛好家たちです。

純血主義者は、ブルベイティングが盛んだったころに出来上がったブルドッグのスタンダード(犬種標準=身体的特徴)に強くこだわっていて、少しでもそれと違うものはブルドッグだとは認めません。


●純血主義っていったって・・・


純血主義とか血統って、そりゃ確かに伝統を受け継ぐことは大切かもしれません。

でも相手は命です。

わざわざ多くの疾患リスクがわかっている犬種であっても、その外見を守る必要性って本当にあるのでしょうか?

ブルドッグがあの姿かたちをしていることで喜ぶのはブルドッグ本犬さんではなくて人間だけなんですけどねぇ・・・

だいたい、ブルドッグを含めてほぼすべての犬種は人間が目的に合わせて交配し、作り出した、いってみれば全犬種がMIX犬(雑種)なんですから、純血って言い方もおかしなモンです。

人間好みの風貌を保つために、多くの問題点を抱えたブルドッグの悲劇が終わる日はくるのでしょーか・・・


最後に、もちろんブルドッグにはなんの罪もありません。
現在、ブルドッグを飼っていらっしゃる方を責めるのもお門違いです。

今後、この問題についてどうしていくか?をみんなで考えながら、生まれてきたブルドッグたちについては大切にしてあげるべきだと思っています。



<今日のPet Hotel 11!>


はのんちゃんとデュークくん
暖かそうなおそろいスヌードだね~♪

MAXくん、今日はお庭からお部屋に入りたがりません。
あんまり寒くないからかな~?

「ボク、チコくんです。よろしくね」
上手にできたね~~(パチパチ)

あ!ドロボーーーッ!!

手に入れたボール。
もう誰にも渡さないぞ!

はのんちゃんは、いつもこのお気に入りベンチへ。

ボスくん、それ貸して~!

「センセー!貸してくれませーーん!」
うん・・・たぶん無理だと思うよ(・_・;)

なんだかんだ言って仲良しなのかな?
このおふたりさん・・・

ボスが図々しくテリーくんのお部屋に入っても
なーんにも文句を言わない優しいテリーくん(笑)

お部屋にいると退屈そうなデュークくん
少しお昼寝しなさーーい!

大好評?だった落ち武者も捨てがたかったけど、
あまりに可哀相だったので修正しました(;'∀')
チャコは暴れん坊だからとっても大変!