【犬に対する人間の責任】
●人工的な動物
お互いの利害が一致した一部のオオカミと人間が共に生活をし始めた何万年も前から現在に至るまで、犬たちは人間の繁殖介入によって他の動物では例を見ないほど、その外見を多様化させてきました。
犬の”種としての歴史”は1万5000年以上も前からあるのに、現存している犬種の遺伝子は、古いものでもたかだか500年前からのもので、大多数は150年ほど前の産業革命の時代からのものだということは前回のブログでお話しました。
このことが何を意味しているかというと、犬という動物は他の動物と違って、ダーウィンの進化論によるところの進化とはまったく違った、人間の手による進化をしてきたのだということです。
通常、生き物の自然な形での進化は、環境の変化などに応じて姿や生態を変化させることによって生き残りを図るというものです。
進化が環境の変化に追いつかなかった種は淘汰されて絶滅してしまうのもまた、厳しい自然の摂理です。
けれども人間は肉体を環境に応じて進化させるのとはまったく逆の方法で生き残っている稀有な生き物です。
むしろ環境に自分たちを合わせるのではなく、環境の方を自分たちの居心地がいい様に整備してきました。
そのため、人間の身体的能力や抵抗力はむしろ進化ではなく退化してきているといいます。
そして、大昔から人間と運命共同体になる道を選んだ犬もまた、人間の手によって大変不自然な進化(退化?)をさせられてきたというわけです。
そういう意味では、犬は人間が作り出した人工的な動物といってもいいのではないでしょうか・・・
●人の手を借りなければ生きられない犬たち
先日、「ブルドッグの悲劇」という記事でお話したように、ブルドッグは帝王切開という人間による医療的な助けがなければ出産することができなくなってしまった犬種です。
プードルなどの被毛が伸び続ける犬種も、人間にトリミングしてもらうことが前提の犬です。
人間にトリミングしてもらわなければ、伸びすぎた被毛が毛玉となってガチガチに固まってしまい、目を開くことが出来なくなったり皮膚が感染症にかかったりするんですね・・・
こういった犬種は、自然な形での進化によっては絶対に存在しないはずです。
●せめて理性は進化させなくては
人間による繁殖介入の歴史を見ていくと、犬という動物を、まるで自分たちの所有物のように扱ってきたわたしたち人間の、犬たちに対する大きな責任におののいてしまいます。
そして、そういう歴史的事実が明らかになっているにも関わらず、未だに犬たちに対する無秩序で無計画な繁殖介入が、なくなるどころか過熱している現状に対して、知性と理性を持った人間として、放置または傍観していることに罪悪感を感じてしまいます。
その昔、”ブルベイティング”が大流行したころの人々は、それがいかに残虐で野蛮な余興だったかということを知らなかったんです。
「え?残酷?何言ってるんだ?ただの牛と犬っころだよ?!意味ワカンナ~イ!」
という価値観でした。
驚くことに、当時の人々はまだ
「動物には感情がないし痛みも感じない」
と本気で信じていたんですからねっ!!
でも、動物に関する研究が進むにつれて、動物も痛みを感じるし心があるのだということが判ってから、動物愛護の考え方が急速に発展してきたのです。
人間は、肉体的に退化していると書きましたが、それを補う知性や理性は進化し続けているはずです。
今までは何の疑問も抱かなかったことであっても、間違っていることに気づいたならやめようよ!!
ってことを声を大にして言いたいです。
何が間違っていることかというと・・・
●繁殖介入に求められるモラル
疾患リスクが高く他の犬種に比べて極端に寿命が短いと言われる犬から、その姿かたちを変えたくないという理由で、疾患を誘発する劣悪遺伝子を取り除くことさえ許さないというのは、現代人の理性やモラルに合致しているのでしょうか・・・?
現在「売れる商品」としてジャンジャン生産されているMIX犬については、様々な問題を懸念する声が専門家から上がっています。
たとえば・・・
・「売れる商品」を作り出すのが交配の目的なので、生まれてみて可愛くない子はすぐに処分してしまう業者がいる。
・生まれてきた子犬が成犬になるとどんな風になるか、誰もわかっていないため、購入した人の手に負えなくなる可能性もある。(捨てられるリスク)
・先天的な疾患リスクなどのデータもまったくないため、将来飼い主さんの大きな負担になる可能性もある(捨てられるリスク)
など、指摘されている問題点のごく一部です。
一方では殺処分ゼロを目指そうと頑張っている人たちがいる一方で、
「先行き不透明だけど、可愛い子犬が産まれたよん♪安いよ安いよー!」
ってな感じで節操なく叩き売る業者が許されているというのは、現代人の理性やモラルに合致しているのでしょうか・・・?
今後は、犬種標準(スタンダード)を規定しているケネルクラブにも、命を作り出すことに介入している繁殖業者にも、外見的な特徴にこだわることや消費者の購買意欲を煽ることだけを重視するのではなく、その犬種が健康的に暮らせることを大前提にした判断基準が当たり前のように求められる時代がきっと来るだろうと信じたいです。
その日が来るまでは、まだ少し時間がかかるとしてもせめて・・・
人間によって作り出されたことによって、人の手を借りなくては生きていけなくなった犬という動物に対して、世話ができなくなったからと簡単に放り出すような所業は、いつか人間自身にとてつもないしっぺ返しという形で戻って来るのではないかと思っています。
<今日のPet Hotel 11!>
ボクたちの写真で 来年の卓上カレンダーを作ってもらったよ! |
来年、お客様に愛犬の写真で作った カレンダーをプレゼントする企画があるんだってさ! ワクワク♪ |
朝のおさんぽ。 見つめているのは・・・ |
おてんとさま ありがたやありがたや~~~! |
チャコ「見て見て~、ワタシのオシリ! ずいぶんフワフワの毛が生えてきたって思わな~~い?!」 |
1ヵ月半前、ここに来たころは、こんなだったんだもん! 早くスッカリよくならないかなぁ~~・・・ |