【犬が少年に起こした奇跡①(つづき)】
犬といってもコレは犬の祖先のオオカミのお話ですが・・・
前回のブログのつづきです。
●ザーネスティという子オオカミ
今まで言葉を発したこともなく、どんなことにも反応したことがないという重度の障害を持つ男の子を、父親の依頼でしぶしぶオオカミとふれあわせることにしたショーン氏。
柵の中からザーネスティという子オオカミを連れてきました。
英国野生動物センターのオオカミたちは、柵に囲まれている以外は基本的に野生のままの生態を保たれていました。
けれどもザーネスティは生まれて間もなく、母オオカミがザーネスティの上に乗って転がってしまったので(←ウッカリ母さんすぎでしょ~!)下あごの骨がつぶれてしまったという子でした。
そのため、ザーネスティは一時期を人間の手で育てられ、他のオオカミと比べて人間に対してあまり神経質ではなかったことが、男の子の相手に選ばれた理由でした。
●対面
ショーン氏がザーネスティを抱きかかえて柵から出す時、まだ生後3か月で遊び盛りのザーネスティはひどく暴れて、ショーン氏は両手に抱えているのが精一杯の状態でした。
虚空を見つめる少年が座る車イスのトレーにザーネスティを注意深く乗せた時も、ショーン氏はしっかりと両手でザーネスティのことを押さえつけていなくてはなりませんでした。
ところが・・・
その少年を見た途端、ザーネスティはピタリと動くのを止めて、じっと少年の目を覗き込みました。
ショーン氏は、まず片手を離してみました。
ザーネスティは動きません。
そこで、もう一方の手もそっと離して様子を見ることにしました。
●咬みつくのか?
ザーネスティは少年が乗った車イスのトレーの上で、まっすぐに少年の目を見つめながらオスワリし・・・やがて前脚を伸ばして身体を前に乗り出し、少年の顔を舐め始めました。
この行動にショーン氏は驚いて、一瞬ザーネスティを引き離そうかと迷いました。
なぜならば、子どものオオカミは大人のオオカミに餌を吐き出してほしいとせがむときに、大人の口を咬む習性があるからです。
ショーン氏は、ザーネスティがその針の様に細く鋭利な歯で少年の口を咬むのではないかと身構えたんですね。
けれどもザーネスティは少年に咬みつきませんでした。
●奇跡
ザーネスティはただただ、とてもやさしく少年の顔を舐め続けました。
そして・・・
ショーン氏は、ザーネスティに優しく舐められ続ける少年の目から涙があふれ出し、頬を静かにつたうのを見たのです。
驚いたショーン氏が少年のお父さんに目をやると、その光景を見ていたお父さんもまた、涙を流していました。
生まれて間もなく、ウッカリ母さんに下あごを潰されるという不運な事故に遭い、ショーン氏いわく、
「ミッキーマウスの友達のグーフィのような顔」
になってしまった小さな子オオカミ ザーネスティは、この14年間人間たちがどんなに苦労しても成しえなかった形で、生まれてから1度も感情を表現することのなかった少年の心をあっという間に揺さぶったのでした。
【オオカミの持つ不思議な力】
もうひとつ、”犬が少年に起こした奇跡”の実話をご紹介したいのですが、その前に、ショーン氏が著した「狼の群と暮らした男」の中から、オオカミが弱っている人を見分ける(嗅ぎ分ける?)能力と、それを癒す不思議な力について、もう少しご紹介させてください。
●健康な人のはずなのに・・・
ショーン氏がクームマーティンという場所のパークでオオカミたちの世話をしていた時のことです。
ここでは、パークを訪れる人が野性のオオカミを柵の外から見ることができ、希望者には柵越しにオオカミとふれあうことができるようになっていました。
オオカミとのふれあいを希望する人には、必ず事前に次のような質問をすることになっていました。
・慢性の病気のある人はいますか?
・妊娠中の人はいますか?
・生理中の女性はいますか?
なぜなら、これらのことがオオカミたちの行動に多大な影響を与える恐れがあったからです。
ある時、病気の申告をしていない、まったく健康そうに見える男性に対して、1匹のオオカミが柵越しに近づき、男性の手を舐めはじめました。
優しく、けれども執拗に男性の手を舐め続け、男性がその場を離れる時もまだ名残惜しそうにしているオオカミを見て、ショーン氏は驚きました。
オオカミが見知らぬ人にこのような態度を取ることはまずないのを知っていたため不思議に思ったショーン氏はパートナーに
「本当に彼はなんでもなかったの?」
と確認しましたが、
「何も問題はないと言っていた」
と聞いて、この件は忘れようとしていました。
ところが・・・
パークからの帰り道、坂道で息を切らすその男性に「大丈夫ですか?」と声をかけたところ、
「この件は関係ないと思って黙っていたが、実は自分には血液の病気があり、それで時々息切れしてしまうのだ」
と答えたのだそうです。
傍目にはまったく判らないような病気を、オオカミは瞬時に見つけてしまったというワケですね。
●心の病
ある日、ひとりの大柄でガッシリとした体形の男性が柵の外からオオカミたちをながめていました。
ショーン氏は、彼が妻と3人の子供たちと一緒にパークに来ていることに最初は気づきませんでした。
男性は他の家族と完全に別行動を取っていたからです。
ショーン氏はすぐに、その男性とダコタというメスのオオカミが繋がったことに気づきました。
ダコタは、男性がかかめば同じようにかがんで見せ、男性が横に少し跳ぶと同じように横に跳びました。
こんな行動をとるオオカミを初めて見たショーン氏は大変驚きましたが、ダコタは明らかに男性をじっと見つめ、男性のしぐさの全てを真似していたのです。
実はその男性はラグビー選手でした。
ところが最近背中に大怪我を負って二度と走れない体になり、選手生命を絶たれたばかりだったのです。
人生の全てを奪われたように感じた彼は深く落ち込んで、家族やその他のすべてのことから遠ざかり、心を閉ざしてしまったそうです。
そして・・・
男性とダコタの間に何が起きたかはわかりません。
けれども、ダコタとの静かな交流の後、男性は家族の元へ行き、奥さんと子供たちに謝りながら涙を流し、熱い抱擁を交わしていたといいます。
ダコタが男性の心を蘇らせた瞬間でした。
ダコタの、男性の動きを完全に模倣するという行動は、その時の男性にとって、”共感してもらえた”ことを実感できる究極の方法だったのかもしれないとわたしは感じました。
柵越しに、言葉も通じない異種の動物が、傷ついた人の心にこんなにも劇的な作用をもたらすことができるなんて・・・
「アンビリーバボっ!!」(←
さて、次回は”犬が少年に起こした奇跡”のふたつめの実話をお話しましょう。
<今日のPet Hotel 11!>
マッシュくん、今日からお泊りがんばろーね! |
よろしく~~♪ |
グレイスちゃん&ボス 「ねえねえ、お庭番!何してんの~?」 |
ラニくん「おい、何してる?」 |
チャコのシャンプーだよ~~! |
ラニくん「なんでオイラがこんな所にいるか わかるか?」 |
知ってるよ~!グレイスちゃんに お部屋を占領されてるからだよね~ (^-^; |
マッシュくん「じゃあボクがどうしてここに いると思う~~?」 |
うん、ボスがマッシュくんのお部屋を 占拠してるからだね~(^-^; |
ラニくん「オイ!何してんだ?」 チャコを乾かしてるんだよ~! |
ラニくん「オイラにも見せろ!」 ハイハイ(笑) |
ラニくん「なあなあ!なあってば!」 ちょっとラニくん、ジャマすぎだよ~(笑) |