前回のブログでは、元保護犬の飼い主さんの、愛犬への接し方についてお話してきました。
元保護犬の飼い主さんというのは・・・
●そもそも動物愛護の意識が高い人が多い。
●飼い始める時の覚悟が違う。
●『無知の知』という謙虚さがある。
●愛犬との関係を過信しすぎていない(常に絆を深める努力をし続けている)
でしたね。
【愛犬へのリスペクト】
●根底にあるのはリスペクトの気持ち
元保護犬の飼い主さんたちに共通する、上記のような愛犬に対する姿勢の根底にあるのは『愛犬へのリスペクト』ではないでしょうか。
単に可愛がるのではなく、相手の立場や特性を尊重しているということです。
愛犬のことを自分に帰属した所有物のように思っておられないし、当然、自分の分身のようにも思っていらっしゃいません。
●ネガティブ情報の伝え方
わたしたちがそれを一番強く感じる瞬間は、初めてPet Hotel 11!にワンちゃんをお預けいただく際に、飼い主さんがワンちゃんのネガティブな情報をお話ししてくださる時です。
たとえば・・・
『大きな物音をひどく怖がって落ち着きがなくなってしまう』
というワンちゃんだったとします。
そのことをお話くださる際に、元保護犬ではないワンちゃんの飼い主さんたちの多くは
『まーったくも~~!この子はビビリでしょーがないんですよ。困ったモンです~。大きい音がすると慌てふためいてドアに突進したりして・・・どーすれば直りますかねぇ~?』
というようなニュアンスです。
けれども、元保護犬の飼い主さんたちは、少し違ったニュアンスでお伝えくださいます。
『この子は大きな物音が苦手です。特に〇〇のような種類の音はダメなんです。怖がって我を失って暴れたりもするので、そういう時は△△のようにしてやってください。そうすれば落ち着きますので』
という風に堂々と自信たっぷりに、そして具体的にお話くださいます。
・・・おわかりですか?『まったくも~』感 がゼロ!(笑)
両者とも、内容としては同じことをお伝え下さっています。
単に、”伝え方の違いでしょ?”といってしまえばそれまでです。
けれども、不思議なくらい、元保護犬の飼い主さんたちは、漏れなく決まってこういったニュアンスで愛犬のネガティブ情報をハッキリキッチリお伝えくださるのです。
わたしたちが、これが元保護犬の飼い主さんの一番の特徴だと感じているくらいに・・・
●個性を尊重したしつけ
愛犬のネガティブ情報を自信たっぷりに伝える・・・
と言うと、問題行動をちゃんとしつけないって意味かと勘違いされる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、それは違います。
実際、『幸せになった保護犬たち②』に書いたように、現在、新しい飼い主さんの元で幸せになっている保護犬たちは、むしろとても穏やかで、扱いに苦慮するような問題行動は少ないのです。
しつけというのは、決まった型にはめるということではありません。
ワンちゃんのしつけの本質は、
◆人間社会でペットとして人と共生するワンちゃんを、人に迷惑をかけないための最低限の制御ができる状態にすること。
◆習性もコミュニケーション方法も異なる人間社会の中で、ワンちゃんが混乱してストレスを抱え込まずに済むよう、判りやすく人間社会におけるルールを教えてあげること。
それだけなのです。
視力が弱い人に、裸眼で黒板の字を見るように強制しますか?
しませんよね。
視力が弱い人は、眼鏡やコンタクトを使用します。
そうすることで、
『字が小さくて見えねーぞぅ!』
と、授業のたびに視力の弱い生徒がブーイングして授業を妨げ、他の生徒に迷惑をかけることもなくなりますし・・・
視力が弱い人自身のストレスも軽減されますね。
では、大きな音に怯えて我を失うワンちゃんにはどういうしつけをするでしょう?
外出先で我を失って暴れ出したりすれば人の迷惑になりますし、本犬さんにとってもストレスの多い暮らしになってしまうでしょう。
そうならないために、飼い主さんはまず、ワンちゃんの音に対する恐怖心を取り除いて、苦手意識を克服する努力をするでしょう。
それが一番、人に迷惑をかけず、ワンちゃんにとってもストレスなく暮らせる方法だからです。
けれども、元保護犬のように背景に様々な辛い経験を持ち、簡単には恐怖心を払拭してあげられないようなトラウマを抱えているワンちゃんにそれを強要するのは、視力が弱い人に
『もっと気合を入れて目を見開いて黒板を見ろっ!』
と言っているようなものです。
ですから、努力やしつけで克服できないことは、その人(その犬)の個性と捕えて、眼鏡のような代替え法を用いるわけですね。
元保護犬の飼い主さんたちが、愛犬が苦手とすることを、包み隠さずご説明くださり、それに対する対処法を具体的に教えて下さるのは、そういうことなんですね。
愛犬の個性を尊重した上で、人間にもワンちゃんにもストレスがかからない方法を確立されている・・・その努力を積み重ねてきたという確固たる自信があるからこそ、元保護犬の飼い主さんたちはみな、堂々と愛犬のネガティブ情報についてお話くださるのではないかと思うのです。
●元保護犬の飼い主さんたちは・・・
今まで書いてきたことをまとめます。
Pet Hotel 11!にワンちゃんをお預けくださる元保護犬の飼い主さんたちに共通している点、それは・・・
辛い過去を背負ったこの子に、もう決してこれ以上 辛い想いをさせない。
この子にはこの子の犬格があって、わたしはそれをリスペクト(尊重)している。
わたしと愛犬はお互いに歩み寄って確かな絆を築いてきた。
けれどもわたしは、この子のことを全て理解できているなどとは思っていない。
だからこそ、理解を深め、絆を壊さないための努力を、今もこの先もずっと続けていく。
こういった確固たる意識があることのように感じています。
そして、わたし自身も、ワンちゃんたちに向き合う時にはぜひこのように謙虚でありたいと思っています。
【想いは伝わる】
愛犬家のみなさんならご存じでしょう。
ワンちゃんが、いかに飼い主さんに注意を払っているか、常によく観察し、飼い主さんの意図を汲もうとしているかを・・・
飼い主さんが、ワンちゃんを尊重して謙虚な態度で理解を深めていこうと努力し続けている姿勢を、そんなワンちゃんたちが見逃すはずはありません。
こういう飼い主さんに引き取られて幸せになった保護犬たちが、みな穏やかで、ストレスをため込んでいないのは、当然のことだとは思いませんか?
※毎度しつこいようですが、元保護犬の飼い主さん以外は意識が低いというようなことを言っているのではありません。意識の高い飼い主さんもたくさんおられます。誤解なきようお願い申し上げます。
あとちょっとだけつづきますが、長くなったので次回にしま~す。
<今日のPet Hotel 11!>
雨降りでお外遊びができな~い。お散歩も短~い。 つまんな~~~~い! |
お隣も覗けな~い。お庭の虫を玩べな~い。 つまんな~~~~い! |
外歯瘻のハナちゃん、今日からお泊りです。 お薬を飲んで頑張っています! |