本日、茅ヶ崎市保健所で開かれた緊急譲渡会に行ってきました。
今回の譲渡会については、必死で成功させようとする人や応援する人も数多くいた一方、断固として反対する人もいました。
【茅ヶ崎市の緊急譲渡会】
●経緯
緊急譲渡会を開くとの情報がネットで公開されたのは、今月23日(月)のことでした。
シーズー×ヨーキーのMIXが30頭、一度に飼育放棄されたのです。
原因は多頭飼育崩壊でした。
神奈川県の保護センターはもう一杯で、受け入れは実質不可能。
このままでは殺処分を免れない・・・
ということで、茅ヶ崎市の職員さん、獣医さん、保護団体さんが協力して急遽、この譲渡会を開くことになったのです。
関係している保護団体さんご自身が、
『色々問題がある事は、皆が認識しており、言いたい事も沢山ありますが・・・』
と仰っているように、この譲渡会は保護団体さんとしても不本意なことだらけの異例の譲渡会だったのです。
それだけ、切羽詰まっていたということなのでしょう。
●保護犬譲渡の暗黙のルール
保護犬の譲渡について、ハッキリとした決まりはありません。
けれども、保護団体の多くは、保護しても保護しても捨てられる子がなくならないことに対する問題意識が人一倍高いわけです。
せっかく救った子たちが、もう二度と酷い目に遭ったり捨てられたりしないために何が必要か?
ということを考えて、いわば暗黙のルールのようなものができあがっているんですね。
保護した子の状態や性格、置かれていた環境などによっても違いますし、保護団体によっても考え方は微妙に異なるようですが・・・
暗黙のルールとは、たとえば次のようなことです。
◆保護団体が健康状態や性格を把握してから譲渡
新しい飼い主さんにワンちゃんを引き渡してから、思ってもいなかった重大な疾患が見つかった場合に
『こんなはずじゃあなかった。こんな子と知っていたら引き取らなかった』
と言って、飼い主さんがまたワンちゃんを捨ててしまう可能性があります。
そうなっては元も子もありませんし、ワンちゃんだって可哀相です。
だから、あらかじめ保護団体でそういったことをチェックした上で、それを承知で引き取ってくれる飼い主さんを探すんですね。
◆保護団体で去勢や避妊手術をした上で譲渡
少し前に、これを一切しないで譲渡していた有名な団体が非難をあびていましたが・・・
去勢や避妊をしないばっかりに、無計画に近親交配をしてどんどん数が増えてしまうケースが実に多いんですね。
いきつく先は多頭飼育崩壊・・・
更に、近親交配による重大な病気を持ったワンちゃん・・・
収容場所がないというのに、捨てられるワンちゃんはどんどん生まれて増えていくという状態になります。
それを防ぐには去勢・避妊手術をするしかないのですが、新しい飼い主さんが果たしてそれを確実にやるかどうかなんて、保護団体にはわかりません。
数年後に、どこかの家で多頭飼育崩壊があったとの知らせを受けて駆けつけてみたら、それは以前に自分たちから保護犬を引き取った人の家だった・・・
あの人に保護犬を1匹譲渡したら保護犬30匹になって戻って来たヨ!得したねぇ~~♪
・・・ってなるかーーーいっ!!
っちゅーお話ですね。
ですから、多くの保護団体さんでは、引き取ったワンちゃんの去勢・避妊手術をして、新しい飼い主さんに譲る際に、その費用を新しい飼い主さんに払ってもらう・・・という形で譲渡活動をしているケースが多いんです。
◆相性や引き取る人を見極める
『保護犬だって~!処分されちゃうんだって~!可哀相~~!』
という一時の同情だけで軽々しく保護犬を引き取ってしまった飼い主さんが、その熱が冷めてから
『こんなはずじゃなかった・・・いたるところにオシッコはするし、アレルギー持ちだし、ぜんっぜん懐かないし、もう無理~~!ワーーン!』
なんてことも珍しくありません。
それ以外にも、
・実はペット禁止のマンションに住んでいて、後になって管理組合から苦情を受けて飼育放棄する人。
・家族に内緒で引き取って、家族に反対されて飼育放棄してしまう人。
・先住犬との相性が悪くて『ウチは無理でした』と飼育放棄してしまう人。
・動物虐待をすることが目的で引取りに来る悪魔のような人。
保護犬を引き渡した新しい飼い主さんが、こんな人だったら大変です。
だから、保護団体さんは、いきなりワンちゃんを引き渡すのではなく、トライアル期間を設けたり、新しい飼い主さんのことを注意深く調べたり、何度も面談をして話を聞いたりするんです。
中には、引取希望の人の家まで確認に行く団体さんもあるんですね。
こういった暗黙のルールは、多くの保護団体さんが、長いあいだ保護活動をしていく中で、失敗から学んだりした結果、経験上『コレが必要だよね』と感じたことを情報交換しながら作り上げてきた知恵なのだと思います。
●今回の譲渡会は・・・
緊急開催、かつ頭数が多かったためでしょうか。
今回の譲渡会は、上記のような暗黙ルールに沿った形ではなく、次のような点が異例でした。
・ワンちゃんの健康状態も性格も全くわからない状態での譲渡だった。
・30頭すべて未去勢、未避妊の状態のままの譲渡だった
(その代りに、新しい飼い主さんは『必ず手術を受けさせる』という誓約書に署名をし、手術したら返金される”約束金”¥30000を支払うという形にされていました)
・譲渡会の当日、その場で保護犬の引き渡しをするという形だった。
(書面と面談による意思確認と、考えられるリスクに関する説明はキチンとされていました)
●反対の声
そのような形で行われた譲渡会だったため、応援する人がたくさんいた一方で、本日の譲渡会に対して、多くの保護団体や個人から、非難や反対の声もあがっていたようです。
こんないい加減な譲渡の仕方をしてしまえば、再び飼育放棄をする人が出てくる可能性が高いし、万一 虐待目的で引き取るような人がいたらどうするつもりなのか・・・
ということですね。
●いよいよこんな日がきたか・・・
今回、緊急譲渡会に関わった保護団体の方たちは、誰よりもこのような形での譲渡会に多くの問題があることをご存じの方たちでした。
日頃の活動内容を陰ながら応援させていただいているわたしたちは、
『その彼らが止むにやまれずこのような譲渡会を開いたのだろうから、そこにはよほどの事情があったに違いない』
という風に判断しました。
同時に、こうなることはもうとっくの昔からわかっていたことでもあるので、
『いよいよこんなことになってきたか・・・』
という暗澹たる気持ちにもなりました。
何度もお話していますが、行政の”殺処分ゼロ計画”は穴だらけです。
飼育放棄自体を減らす政策を取ることなく、単に今まで殺処分していた子たちを、民間の保護団体に引き出してもらうという形で 殺処分ゼロを実現しているにすぎません。
当然、受け皿となっている保護団体だっていつしか受け止めきれなくなる時がくることは、関わっている人たちのすべてが、ずっと前から言っていたことです。
現場で保護犬や保護団体さんと日々接している行政の職員さんたちの多くも、そのことを痛感して、歯がゆい思いに苦しんでおられます。
残念ながら、今後、ますますこういった不本意な形の譲渡活動は増えていくでしょう。
もう限界なんです。
現在のシステムは崩壊しかけているんです。
今回の譲渡会は、その象徴なのだろうと感じています。
●皺寄せは善意の人々に・・・
今回、譲渡会を開催した側の保護団体さんも、反対の声をあげた保護団体さんも、どちらも生き物の命を尊重し、たいせつにしたいと心から考える善意の人々です。
ですから、どちらの方が正しいとか間違っているとかいう問題ではないと、わたしは思っています。
どちらも必死で、
『今、最優先で何をどうするのが よりこの子たちのためになるのか?』
を考えて行動していらっしゃるのでしょう。
同じ目的や理想を共有する、同じように動物を愛する優しい人たちどうしが、なぜ互いに非難し合ったりするようなギリギリのところまで追いつめられなくてはならないのでしょうか・・・
ほんとうに哀しいことです。
一日も早く、保護犬自体の頭数を減らす、いわゆる”蛇口をしめる政策”を実現してもらわなければ、心優しき人たちが疲弊して潰れてしまいます。
政府や行政のトップは、それをどう考えているのでしょうか・・・
本日、わたしは会場にいたNo.10という番号札のついたワンちゃんを家に連れ帰りました。
新しい家族です。
新しい家族についてのお話は、長くなるので次回のブログに書くことにします。
<今日のPet Hotel 11!>
本日から新しい家族になりました! 譲渡会の帰り、その足で獣医さんに行って健康チェック済。 環境に慣れるまでは静かに過ごせるようにしてあげます。 |
MAXくん「しっかしよく台風くるなぁ~~~」 まったく、やんなっちゃうねぇ~~ |
ボス「ねぇ~~~~ ボールはぁ~~~?!」 そんな恨めしい顔したって台風なんだから仕方ないでしょー |
なつ「ちょっとー、早くお外で遊ばせてよ~う」 ・・・って、めちゃめちゃ快適そうに見えるんですがー(笑) |