2017年10月1日日曜日

怯えから咬むワンちゃん(Kくんの場合)⑤

こんにちは。神奈川県 Pet Hotel 11!(ペットホテルワンワン)のお庭番です。


前回のブログで、Kくんのような【愛着障害】が疑われるワンちゃんは、【社会化】の準備ができていないので、単純な【社会性不足】のワンちゃんにするように

◆数多くの経験をさせる
◆たくさんの人や犬に接触させる
◆しつけを徹底する

といった詰め込みスパルタ教育を行うのは、少々キケンだと書きました。

では、Kくんにはどういった接し方をすればいいのか・・・考えてみました。



【とにかく安心できる環境を!】



●業者頼みは最後の手段


【愛着障害】の犬の治療法を調べると、いくつかの獣医さんでは薬物治療を奨められ、それ以外の業者の中には、ヒーリングと称して音楽CDを聴かせたり、アロマを使った改善アプローチを行っているような情報を見つけることができます。

わたしは獣医ではないため、偉そうなことは言えないのですが・・・

でも、個人的には上記のような方法を真っ先に試すのは、少し違うんではないかと思っています。

まずは飼い主さんご自身でできる限りのことをやってみて、その補足としてこういったアプローチを取り入れてもいいかな・・・くらいに考えていただけたら嬉しいです。

だって【愛着障害】は主役の二者(今回の場合はワンちゃんと飼い主さん)の愛着関係を構築することが何よりも重要なんですからね。

本来、他人がどうにかできることではないんです。

※ただし人間の愛着障害の場合、たとえば親が虐待していることが原因なら、あえて親から引き離して専門機関での治療となります。当然ですね・・・


●愛着の育てなおし


人間の愛着障害に対して、最も効果があるといわれている治療法は、薬物療法でもヒーリング療法でもありません

一番の方法は幼少期に与えられなかった愛情を取り戻すというものです。
乳児期にできなかった親や養育者への甘えやわがままをもう一度やり直すことで、愛着(アタッチメント)の『育てなおし』を図るというものです。

時間はかかりますが”急がば回れ”です。

乳児期の愛情を一つずつ埋めていくことが、実は最もぶり返し副作用がない確実な治療となります。

ですから、ワンちゃんの場合、飼い主さんに無条件で愛されていると実感できる状況を作ってあげることが最優先。

飼い主さんとの愛着がしっかりと築かれることで、ワンちゃんは飼い主さんのことを【安全基地】すなわち守ってもらえる拠り所として認識するようになっていきます。

色々な経験を積ませて社会化を促すのは、それから先のおはなし。

ワンちゃんが飼い主さんを【安全基地】だとみなせるようになれば、それを足掛かりにして自分の世界を広げていけるようになるからです。


●引きこもらせない


【社会化】の教育にはまだ早い・・・ってことは、ワンちゃんをお部屋に閉じこめておいて、飼い主さんと24時間ずーっとベッタリにすればいいの?

そんなワケありません!

第一、ほとんどの人にはそんなこと不可能ですよね・・・(;'∀')

むしろ、毎日お散歩にどんどん連れ出して、たくさんのワンちゃんとすれ違ったり視界に入るようにしておいてあげるべきだと思います。

そうしないと、ワンちゃんが晴れて飼い主さんに心を許すことができるようになった時に、いきなり外界に連れ出されたワンちゃんはオドオド大魔王になるに決まってます・・・

気を付けるべきことは、お散歩の際に他のワンちゃんに無理に挨拶させよう近づけたりしないことだと思います。


【具体的にどうするか】


●最も大きなストレスを取り除いてあげる


Kくんの場合だと、現状で一番Kくんにストレスがかかるのは、

本犬さんが引きこもっている時に、

『真正面からKくんに向かって行って話しかけたり触ろうとしたりする』

という場面です。

こういった状況でKくんは、ひどく警戒し、唸り声をあげて、手を出そうものなら咬みついてきます。

ところが、不思議なことにKくんは、こちらが知らん顔をして何か別な作業をしている時には逆に足元に寄ってくるんです。

【反応性愛着障害】の特徴『ひどく矛盾した、両価的な反応』そのものですね。

ですから、お散歩に連れ出すためにKくんにハーネスやリードを着けたい時は、Kくんが近づいてくるタイミングを待って、抱き上げてヨシヨシしてから、その流れで着けてしまえばよいと思います。

そのためには、常に気持ちと時間に余裕をもっていなくてはなりませんね・・・

この、Kくんにとっての最も強いストレスを取り除いてあげることは、信頼関係を構築して飼い主さんが【安全基地】だと思ってもらえる第一歩になると思います。


●Kくんのためだけの時間を取る


忙しい毎日の中で、他に注意を払わない状態でワンちゃんだけに100%気持ちを集中する時間を持つことって、意外とできていない飼い主さんが多いのではないでしょうか。

テレビもなし。スマホもなし。電話もなし。他の家族とのお喋りもなし。

とにかく飼い主さんの愛情をKくんが独り占めできる時間を、毎日必ず作ってあげてほしいと思います。

その際、自分が理想と感じる可愛がり方・・・たとえば

『目と目を見つめあって抱っこしたい』

とか

『こういう体勢や向きで抱っこしたい』

とかは二の次にして、もしもKくんが飼い主さんに背中を向けてナデナデされたそうなら、ちょっと物足りなかったり寂しかったりしても、Kくんの望む通りにしてあげた方がいいと思います。

焦りや、理想のイメージを押しつけることは今の段階では禁物です。

そして、せっかく抱っこしてナデナデしていたのに、Kくんが『もういい』ってそぶりをしたら、素直に開放してあげた方がいいと思います。


●一般的なしつけのセオリーに振り回されない


本当なら、ワンちゃんのしつけに重要なのは、飼い主さんがリーダーだとワンちゃんに解らせ、主従関係をハッキリさせることですね。

そのために、ワンちゃんのペースに飼い主さんが合わせるのではなく、飼い主さんのペースにワンちゃんを合わせるのが基本姿勢なのですが・・・

愛着障害のワンちゃんの場合は、何よりも最優先でまずは愛着障害を克服することからすべてが始まります。

ですから、一般的なしつけのセオリーからは外れてしまいますが、完全にワンちゃんが心を許すことができるようになるまでは、ワンちゃんのペースに飼い主さんが合わせてあげてください。


●ワガママ放題にさせるの?


そうはいっても、何もかもワンちゃんの好き放題にさせていたら、飼い主さんの方が困ることも出てくるかと思います。

ある程度 許せることはワンちゃんのペースに合わせてあげても、どうしてもコレだけはゆずれない・・・ということは出てくるかと思います。

そういった困ったことをワンちゃんがしてしまった時は、大きな声で叱ったり体罰を与えたりといった、ワンちゃんを怯えさせるようなことは絶対にしないであげてください。

信頼関係が台無しです・・・( ノД`)

一番いいのは、ワンちゃんがガッカリするようなこと・・・つまり、完全無視をすることです。

まあこれは、愛着障害でないワンちゃんについても同じことが言えるんですが・・・

静かな落ち着いた低い声でワンちゃんの顔も見ずに『ダメ』と言って、ワンちゃんのいるお部屋から出て行ってしまいましょう。

こういったやり方で、飼い主さんが望んでいないことを根気よく伝えてあげてくださいね。


要するに、ワンちゃんが

『飼い主さんは自分が嫌がることは絶対にしない。絶対安全基地だ!』

『自分は飼い主さんにモーレツ愛されているんだ!』

そう感じるように全力で尽くしてしてあげることです。



もうひとつ、Kくんに対して、コレだけはやらないであげて!

ということがあるのですが、長くなったので次回にお話しすることにしまーす。



<今日のPet Hotel 11!>


海はいつだって大好き!

でも、朝焼けの海はカクベツなんだ♪

ワケもなく駆け出したくなっちゃう・・・!

今日も気持ちのいい秋晴れになりそう♪
さて、何して遊ぼうかな~~!