前回ブログのつづきです。
マリアとウィンディーの物語は、わたしが創作したフィクションでしたが、これからお話することは実話です。
お読みになるにあたってはぜひ、「罪を憎んで人を憎まず」ということでお願いしたいと思います。
【6匹の犬と共に家を追い出されたFさん】
●急なお客さま
少し前のことです。
知り合いのある方から、次のようなご連絡がありました。
「小型犬6匹を抱えて家を追い出され、大変困っている女性がいる。
4匹は預け先が決まったそうだが、残った2匹の預け先を探している。
料金の支払いは自分が保障するので、1カ月ほど預かってはもらえないだろうか?」
ご存知の通り、わたしたちのペットホテルは日中ケージレスでワンちゃんたちをお預かりしているため、他のワンちゃんの迷惑になるようなワンちゃんはお預かりすることができません。
日程的には可能でしたが、詳しいお話は飼い主さんご本人から伺わせていただくこととしました。
すぐに飼い主女性のFさんからお電話があり、その日のうちに面談にお越しくださることになりました。
●Fさんのお話
Fさんに伺ったお話は、次のような内容のものです。
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夫が子供嫌いだったため、子供は作らずに可哀想な犬を引き取って育てようと夫婦で決め、引取り手のない犬を引き取ってきた。
そのため、家も犬を育てる前提で相談して建てた。
現在の6匹は、入手経路は様々だが、譲り受けた時に既に妊娠していた子が産んだワンコもいる。
引取った後で亡くなってしまった子も数匹いるが、みな愛情をかけて大切にしてきた。
けれども、夫の女性問題が原因で夫婦は離婚することになった。
家は夫名義だったがFさんと犬を置いて夫だけが出て行った。
Fさんは、現在いる犬たちが全て亡くなったら家を明け渡すが、それまではその家に住み続けていいという約束を夫と交わしていた。
ところが、今年に入って別れた夫が急逝してしまった。
夫名義の土地と建物を相続した元夫の家族から、すぐに家を引き渡すよう迫られた。
夫との約束を主張し、要請を拒否したが、約束した本人が亡くなった今となってはその約束は無効だとして、プロの立ち退き屋のような人たちを伴って何度も家に押しかけてくるようになり、警察を呼ぶほどの騒ぎになってしまった。
「先生」と名の付くような人にも複数相談したが、Fさんに勝ち目はないと言われ、警察にも「何か起きてからでは遅いから先方の言う通りにしたほうがいい」と勧められ、犬を連れて家を出ることになった。
その上、相続人からはFさんの元夫が亡くなってからFさんが家を明け渡すまでの期間の家賃まで請求され、貯金もすっかり持って行かれてしまった。
6匹の犬がいると言うと、なかなか入居を許可してくれる賃貸住宅が見つからず、事情があって実家にも頼れない。
今は犬たちと車で生活している状態。
やっと知り合いの不動産屋さんの協力で部屋が見つかったが、入居できるのは1カ月後。
また、条件が条件だけに敷金などの初期費用が100万円ほどかかってしまうので、バイトをかけもちするなどして入居日までにお金を作らなくてはならない。
暑くなってきたため、車に犬たちを置いて仕事に行くのが不安だし、散歩もろくにできていないためストレスがたまった犬たちがものすごく吠える。
車に閉じ込めた犬たちが激しく吠えれば誰かに「動物虐待だ」と通報されてしまうかもしれない。
そういうわけで、入居までの1カ月間 犬たちを預かってほしい。
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「周りの人はみな、犬を処分しろって言うんです。
でも私は、殺処分ゼロを願って今までずっと引取り手がいない犬を救ってきたので、そんなことは絶対にできないんです!」
Fさんはそうおっしゃっていました。
●状態のよくない2匹の高齢犬
事情を伺ったわたしたちは、Fさんが賃貸住宅に入居できる日まで2匹の小型犬をお預かりすることにしました。
けれども、2匹は共にかなりの高齢でしたし、車中生活という特異な環境にいたためか、健康状態がいいとは言えないのは明らかでした。
具体的には、2匹とも「超」がつくほどの肥満体で、ビア樽のような胴体をしていました。
また、お散歩ができていなかったためか、爪が巻くほど長く伸びていて、足指も蒸れて変色していました。
お耳もジュクジュクしていて、恐らくマラセチア菌が爆発的に繁殖している状態でした。
体全体からは悪臭がし、すぐにでも洗う必要を感じましたが、決して健康体とはいえない高齢犬を、慣れない環境に連れてきてすぐにシャンプーすること自体、得策とはいえません。
上記のことを踏まえて相談した結果、わたしたちはまず獣医さんに2匹を連れて行き、健康診断をしてもらうことに決めました。
獣医さんには、午前診療が終わるギリギリの時間に滑り込むつもりでしました。
あまりにも2匹の臭いがキツかったので、動物病院と他のお客様に配慮してのことでした。
けれども、結果的には2匹を獣医さんに連れて行くことなく、Fさんは2匹を連れてお帰りになりました。
「1匹は知り合いの獣医さんのところで、もう1匹は知人のところで預かってもらえることになったので・・・」
とのことでした。
車に乗り込むFさんと2匹のワンちゃんを見送りましたが、とても蒸し暑い日で、Fさんの車からは、少し離れた場所にいても、犬たちの排泄物の強烈な臭いが漂ってきていました。
●不安
さて、みなさんはこのFさんのお話を読んで、どのように感じられたでしょうか。
実際には、ここには書けないこともあり、お伝えしたいことの半分も伝わっていないかと思います。
ただ、Fさんの様子や犬たちの様子を実際に拝見したわたしは、たとえお部屋を借りられた後であっても、Fさんが6匹の犬たちの面倒を適切に見ていくことは、正直 現実的に難しいのではないかと感じました。
Fさんの「想い」や「信念」「動物に対する優しい気持ち」「6匹を愛する気持ち」は素晴らしいと思いますし、頭が下がります。
でも、人が背負いきれることには限界があります。
ご夫妻で犬を保護していた時と違って、あの6匹の小型犬たちは、少なくとも現在のFさんの手には負えない状態になっています。
厳しいことを言わせていただけるならば、預かってくれる人ではなく、引き取ってくれる人を探すべきではないかと、そう感じました。
とはいえ、ウチで預かろうとしていた2匹は高齢犬のため、引取り手を見つけることは難しいのかもしれませんが・・・
他の4匹についての情報は、わたしは持っていないためやはり何も言えない立場です。
結局、Fさん個人の問題ですし、初対面のわたしなどが何か言うのは「余計なお世話」だろうという遠慮もあり、わたしの思いをお伝えすることはできませんでした。
今も、Fさんに言った方がよかっただろうか・・・と複雑な思いでいます。
長くなるので、つづきは次回にします。
<今日のPet Hotel 11!>
今日も雨・・・ |
ってゆーーーか台風なんですけど~~?! (・・・Cちゃん、そんな目で見ないで だから昨日そう言ったぢゃ~ん? (;'∀') ) |
ほら、ガレージで遊んでいいからね~! |
ワーーーーイ♪ |
イエーーーーーーーイ!! |
え・・・!! お庭に通じる道が閉ざされてるんですけどーー?! (だから・・・土のところはダメだってばー!(;'∀')) |
Mくん「ボクら、別にお部屋でのんびりできれば」 Sちゃん「ぜんぜんかまいませんけど~~?」 |
チャコ「もうクマたんで遊ぶのにも飽きました」 |