前回のブログで、わたしの説明が足りなかったために、何人かの方が「擬人化」の意味を取り違えてしまわれたようでした。
そこで、今日はお話を先に進める前に、動物生態行動学における「擬人化」の定義についてご説明しておきましょう。
※「擬人化」と一口に言っても「よい擬人化」と「望ましくない擬人化」がありますので、シリーズのタイトルも「擬人化しないで!」から「擬人化しすぎないで!」に変更しました。
【動物を擬人化するということ】
●「擬人化」の定義
動物行動学における「擬人化」というのは、一言でいうと
「対象動物の感情や行動を 人間の感情や行動に当てはめて推し量ること」
です。
これを、わたしなりに誰にでも理解しやすい言葉に直すと・・・
「動物の生態を正しく知ろうとせずに人間の感覚で判断してしまうこと」
となります。
犬は、感情的な部分で人間に非常に近いので、たとえ人間が固定概念を犬に当てはめてしまったとしても、それが”たまたま”当たっている場合も多くて、その時は「結果オーライ♪」ということになります。
けれども、そのことがかえって、わたしたち人間に犬を客観視する(擬人化しない)ことを難しくしています。
そのため、誤った「擬人化」をしている飼い主さんも大変多く、動物学者やトレーナーは口を酸っぱくして
「擬人化するなー擬人化するなー!」
と警鐘を鳴らしているというわけです。
それはいったい誰のためか・・・言うまでもなく愛犬と飼い主さんの快適な暮らしのためです。
●学者やトレーナーが「擬人化」に警鐘を鳴らすワケ
動物生態学や動物行動学の分野においては、動物を「擬人化」することは絶対にやってはならないことだというのが常識です。
何故なら、「擬人化」することによって対象動物の真の生態やシグナルを見誤ってしまうことが多いからです。
たとえば、産卵するウミガメが涙を流しているのを見て、動物学者が
「嗚呼!ウミガメさんが泣いている!きっと苦しいんだろう。それともどこか痛いのかしらん?」
などという情緒的でトンチンカンな解釈をしたら、ウミガメについて正しく知ることはできないでしょう。
正しく知ることができないということは、正しく接することも正しく守ることもできないということです。
※ちなみに、ウミガメは悲しくて泣いているのでもうれし泣きしているのでもありません。
体に取り込んだ海水から余分な塩分を排出しているだけです。
ウミガメがは海中でも目から水分を出しています。
たまたま陸上ではそれが泣いているように見えるだけのことですので、どうかウミガメさんにハンカチを差し出したりすることのないようにお願いいたします(産卵のジャマだからねー)
相手の意図やシグナルを見誤る「望ましくない擬人化」の結果、それに応じて人間が取った行動が、取り返しのつかない事態を招いてしまう例について、わかりやすくするために、敢えてものすごく極端なお話をしましょう。
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愛ちゃんは3歳のとっても動物好きな、優しい女の子です。
ある寒い晩のことでした。
愛ちゃんは、リビングから声が聞こえた気がして真夜中に目が覚めました。
そっとベッドから抜け出して見に行くと、水槽の中から金魚のキンちゃんが嬉しそうにこっちを見ています。
「まあ、キンちゃん、アナタがワタシを呼んだのね!どうしたの?」
愛ちゃんはキンちゃんに話しかけながらそっと指を水槽に入れてみました。
「キャッ、冷たーいっ!!わかった!キンちゃん、きっと寒かったのね!可哀想に・・・」
愛ちゃんは、キンちゃんを冷たい水の中から助け出して手のひらで温めながらベッドに戻り、お布団をかけてあげて”イイコイイコ”と撫でながら添い寝してあげました。
翌朝、キンちゃんはどうなっていたでしょう・・・( ノД`)
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おわかりでしょうか?
アナタは、向こうからバッファローが子犬のようにしっぽをフリフリしながらこちらにやってきたら、
「まあ!しっぽを振っているわ!喜んでいるのね♪オイデオイデ!」
と、両手を広げて待ち受けるでしょうか?
アナタは、山奥でヒグマが後ろ脚で立って飛び掛かって来ようとしたら、
「あ!ポチが喜んでやる仕草と同じだ!なんて可愛いんだ♪ヨーシヨシヨシ!」
ってヒグマの頭をカシカシ撫でてやろうとするでしょうか?(←届かないって・・・)
絶対にそんなことをしないのは、わたしたちがバッファローやヒグマの生態について、「自分がよく解っていないことを判っている」からでしょう。
バッファローやヒグマには、「自分の既成概念がきっと当てはまらないと思う」からでしょう。
そして、その認識は しごく真っ当で正しいものです。
●犬を「擬人化」しないことの難しさ
犬好きな人が、犬を「擬人化」しないようにするのは至難の業(わざ)です。
わたし自身も、こんな風に偉そうなことを言いながら、「擬人化」はいけないとよーく理解しているにも関わらず、
「あ!今、思いっきり擬人化しちゃってた!(;^_^A」
って反省することがしばしばあります。
愛犬を「擬人化」することで何が困るかというと、犬のことを人間と同じように扱ってしまい、客観的な観察眼を失うという落とし穴に陥りやすいことです。
人間が特に犬を「擬人化」しやすい理由は、
「犬は感情的な部分で人間に非常に近いから」
ということ以外にもうひとつあります。
それは、
「犬が他の動物に比べて ずば抜けて人間への理解力があるから」
です。
犬が、類まれなる柔軟性と協調性、優れた観察力と、人間に対する従順さを持っていることは、犬好きな人なら誰でもご存知でしょう。
犬はまさに、これらの能力によって人間にとって”なくてはならない無二の友達”となり、人間社会に溶け込んで確固たる地位を築いてきた動物なのです。
犬たちにとって人間は生きるための拠り所ですから、人間の何倍も優れた観察眼で、人間の何倍ものエネルギーを注いで、人間を理解しようと努めているんです。
更にすごいのは、犬はその努力を怠らないってところです!
同居のご家族がいらっしゃる愛犬家の方は、ちょっと考えてみてください。
お宅のご家族で、毎日アナタが外出するときに「行かないで~」って悲しそうな顔をしてくれる人はいるでしょうか?
お宅のご家族で、毎日アナタが仕事から帰宅したときに「玄関まで飛び出してきて、喜びを全身で表現してくれる人はいるでしょうか?
お宅のご家族で、愛犬よりもアナタの一挙手一投足に関心を持ってくれている人はいるでしょうか?
そう・・・愛犬は飽くことなく毎日の一瞬一瞬において、常に飼い主さんに注目し、飼い主さんが何を考え、何を望んでいるかをくみ取ろうとしているんです!
その結果、動物でありながら、あまりにもわたしたち人間の気持ちや言っていることをよく理解し、わたしたち人間の意に沿った行動をしてくれる犬のことを、人間は自分も正しく理解できていると思い込んでしまう可能性が大きいというわけです。
●何に気を付けるべきか
犬を「擬人化」しないように気を付けましょう。
と言われたからといって
「じゃあ、犬に人間の名前をつけたらダメなの?」
とか
「じゃあ、人間の言葉で話しかけたらダメなの?」
という風に誤解される方がおられますが、そんなはずはありませんね。
わたしたちは人間ですから、人間のやり方で犬に接するしかありません。
「犬と接する時には、四つん這いになり、犬の吠え声を出し、臭いで相手を判断しなくてはなりません」
などと言われたら、誰も犬を飼わなくなるでしょう(;´Д`)
犬を「擬人化」しない・・・というのは、そういうことではなく、
・「犬は動物である」ということを決して忘れない。
・犬の生態や行動を正しく理解した上で犬に接するように心がける。
・犬と接する時は、自分の感情に引きずられて冷静な判断力を失わないようにする。
ということを言っているに外なりません。
実はこれ、すべて
「犬を犬としてみなしてあげる」
ということなんです。
さて・・・「擬人化」の概念がお解りいただけたでしょうか?
次回は、「いい擬人化」と「望ましくない擬人化」の区別と、よくやってしまいがちな「望ましくない擬人化」の例をお話していきたいと思います。
<今日のPet Hotel 11!>
朝っぱらから昼寝 (-_-;) |
Mくん「寝てないで遊ぼうよ~」 ボス&チャコ「ん~~~?」 |
こっちも・・・(-_-;) |
Mくん「寝てないで遊ぼうよ~」 なつ「ん~~~?」 |
みんな大好き♪海岸さんぽ! Kちゃんもルンルンで~す(^▽^) |
あ、またMくんがホリホリしてる(;'∀') |
初めましてっ!Rくんです! |
Rくん「う・・・すごい圧迫感・・・」 |
おてんばNちゃん(通称黒ウリちゃん)が やってきて、Mくんのいい遊び相手に なってくれたよ~~(^▽^)/ |
そして、同時にお水を飲もうとするふたり(;^_^A |
お散歩中にも、またはじまった~~(;'∀') どんだけ仲がいいんでしょ? |
Kちゃん、相変わらず味がありますねぇ~! 若いワンちゃんたちのはしゃぐ様子を 静かに見守っています。 |