2018年6月6日水曜日

置き去りにされためぐちゃんのお話③

こんにちは。神奈川県 Pet Hotel 11!(ペットホテルワンワン)のお庭番です。




前回ブログのつづきです。


【なぜこんなことになったのか 2】



●遺失物の保管体制


◇3か月保管されないものもある


めぐちゃんを保護したAさんが、拾得物の書類を警察に提出したことで、めぐちゃんは「遺失物」という扱いになりました。

こういうケースは珍しいことではありません。

「遺失物」は、原則 警察で保管しておきます

3か月経っても持ち主が現れない場合は、拾得した人のものになる(拾得者が希望した場合)か、警察によって処分されるのですね。


ただ、ここで問題になるのが、警察の遺失物保管スペースです。

実際、そんなに広いスペースがある警察署は少ないので、例えば傘のような「3か月も保管しておけないほど大量に届けられるもの」については、もっと早い段階で処分していいことになっているそうです。


余談ですが、昨年(2017年)1年間で東京都内で落とし物として警察に届けられた傘の数は33万本で、そのうち持ち主が取りに来た傘はたったの3千本だそーです。

これは警察に届けられた本数だけですからね。

駅やコンビニや宿泊施設などの施設に届けられる傘の数を合わせたら大変な数になりますね~(-_-;)


では、落とし物のバッグが警察署に届けられたとして、その中にスーパーで買ったお肉やお刺身、アイスのようなものが入っていたとしたどうでしょう?

当然、警察署の保管庫にそのまま3か月も収納していたら腐敗したり溶けたりしてしまいます。

まさか、2か月後にノコノコ現れたバッグの所有者が、


「ちょっとぉ~!中に入っていた中トロと和牛霜降り肉とハーゲンダッツは?!」


なんてお巡りさんに詰め寄るはずもありませんよね?(←ツワモノ~~!)


ですから当然、こういった食品などは、警察の判断で3か月を待たずしてサッサと処分されます。


このように、遺失物は何でもかんでも律義に3か月キチンと保管されているとは限らないってことです。


このあたりも、前回のブログで書いたとおり、


「落とし物を預かっておく業務は善意のサービスだからね~」


という姿勢の表れではないかと思いますし、実際それでいいと思います。



◇生き物の保管体制は?


傘や食品はそのように臨機応変に処分している警察ですが、では犬や猫といった生き物が届けられた場合はどうなのでしょう?

ご想像の通り、警察にはペットを3か月間も適正に飼育しておくようなスペースはありません。

では、どうするかというと、多くは次のふたつのパターンに分けられます。


1)届け出た人が自宅で預かってくれる(Aさんはめぐちゃんをそのようにしました)

2)警察から保健所に引き渡される


Aさんがめぐちゃんを「自宅で預かります」と申し出た時に、警察も保健所も


「ご迷惑をおかけしますが、お願いします。助かります。」


と言っていましたね?

そうなんです。

警察も保健所も、一般市民が動物を自宅で預かってくれたら、そりゃもう大助かり♪なんですよ!


本来は「遺失物」として届け出られたものは、警察で3か月保管するか、警察によって処分されなくてはならないところを、生き物に限っては、飼養スペースや飼養環境がないという、それだけの理由で、警察は「保管」も「処分」も自らの手では行わないのです。


ハッキリ言ってしまえば、生き物に関しては、「遺失物」の届け出がされた直後から、まともに「遺失物」としての管理ができていないという実情があります。


にも拘わらず、ひとたび所有者が現れて裁判になったら、いきなり正攻法の「遺失物法」を適用すること自体が、もうナンセンスったらナンセンス~!!

そうは思いませんか?

もし、所有者の所有権について、どうしても3か月という期間にここまで厳密にこだわるのであれば、全国の警察署に、たとえ何頭の犬や猫が連れて来られても適正に3か月間は飼養できる施設を用意してからにしてほしいものです。


Aさんは、ずぶぬれで口輪をされ、公園に置き去りにされている犬を見て「可哀想だ」と思い、放っておけないからわざわざ保護して届け出たのです。

更に、自宅に引き取ってゴハンを食べさせ、排泄の世話や散歩をし、お金も時間も労力も割いて、警察が本来すべき「保管」をしてくれていた・・・

そのような人に対して、一体どういう権利があって警察が


「規則ですから返還してください」


などと言えるのかー・・・・


「アンタたちは、警察としてこの遺失物(めぐちゃんです)に関してどんな仕事をしたわけ?」


そう言ってやりたい気持ちでいっぱいです。



●生き物に”保管期間「3か月」”の適用は不適当


◇保護した人が自宅で預かれない子たちは・・・


さて、先述したパターンのふたつめ・・・

つまり、届け出られた犬を、警察署でも保護した人の家でも預かれない場合、ほとんどの場合 警察は保健所(保護センター)に引き渡すとお話しましたね。

では、警察から「この子をヨロシク~!」と言われて犬を預かった保健所は、


「これは遺失物だからな、3か月間は、いつ飼い主が迎えに来ても返還できるように健康な状態で大事に保管しなくっちゃな」


という取り組みをしているのでしょーか?


答えはNOです!


もうお分かりですね。

保健所における動物の保管期間は、保健所にもよりますが、だいたい長くても2週間程度です。

つまり、その間に飼い主が名乗り出るか、または新しい引取り手が見つかるかしなければ、殺処分になってしまうんです。

これはいったいどういうことでしょうか?



◇行政は裁かれない?


行政は、所有権がまだ飼い主にあるかもしれない、つまり人さまの犬や猫を「勝手に殺している」ということになるのです。


今回のめぐちゃん事案では、裁判所は、遺失物の保管期限ギリギリの2か月と20日くらい経った時に名乗り出てきためぐちゃんの元飼い主の「所有権」を守りました。

そして、めぐちゃんを保護して一生懸命育ててきたAさんには返還命令を下しました。

けれども、Aさんが引き取っていなければ、元飼い主がノコノコ現れたその時・・・すでにめぐちゃんは殺処分になっていたかもしれません。

そういう子たちがいっぱいいるはずなんですよ。


なぜ裁判所は、めぐちゃんの元飼い主の「所有権」は守るのに、保健所で「遺失物」の保管期限の3か月を待たずして殺処分される犬や猫の命は守ってくれないのでしょーか?


処分されたペットの飼い主が現れて


「可愛がっていたペットを勝手に保健所に殺された!訴えてやる!」


と裁判を起こしたら、裁判所は保健所に賠償命令を下すんでしょーか?



◇保健所や保護団体から譲渡された場合は?


では仮に、Aさんが預からずに、めぐちゃんが警察署から保健所へと引き渡されていたとします。

幸い、めぐちゃんは殺処分になる期日前に保護団体によって保健所から引き出してもらい、すぐに新しい飼い主さんが決まったとしましょう。

めぐちゃんの新しい飼い主さんがFacebookなどのSNSにめぐちゃんの写真を投稿し、それを見た元飼い主が


「捨てたつもりはないの。私の愛犬を返してっ!!」


と言って、Aさんに起こしたのと同じように裁判を起こしたとしたらどうなっていたと思いますか?

それでも裁判所は、


「3か月以内に所有者が名乗り出たのだから、めぐちゃんを返還しなさい」


と、言うのでしょうか?

それは考えにくいですよね。

だって、現在の飼い主さんは、正規のルートで犬を譲渡され、飼い主登録をしているはずなんですから・・・



●善意の個人がバカを見るシステム



何が言いたいかというと、この国の現行法や司法の在り方は、まさに


善意の個人はバカを見る


そんな仕組みになっているってことです。


警察は、保管しておくべき「遺失物」を厳密に3か月間 保管などしていません。

警察から生き物を「遺失物」として託された保健所だって、3か月を待たずして他人の所有物かもしれない「遺失物」を「処分」したり「他人に譲渡」しています。


なのに・・・


どうして、最も適正に「遺失物」となった生き物(めぐちゃんです)を健康な状態で飼育(保管)していたAさんのような善意の個人だけが、こんなにも厳密に「遺失物法」の元で裁かれ、敗訴するような酷い目に遭わなくてはならないのでしょうか?



結局・・・生き物に対して法的に「所有物」と位置付けることは、その運用において様々な不都合や矛盾が生じることが明らかなのですから、法律を改正するしかないのではないでしょーか?


これは単に「愛犬をモノ扱いされて気分が悪い」というような感情論では片付けられない問題です。



このお話はまだつづきます。





<今日のPet Hotel 11!>

お外は雨なのでお部屋遊び
ボス「ズルいぞチャコ!」

ボス「ズルいぞ~~~~~!!」
ん?なにが・・・・?(;'∀')

ボス「オモチャを3つも独り占めして~~!」

チャコ、ボスにもオモチャをあげなさ~い!
チャコ「ボスが取りにくればいいじゃ~~ん!」
ま、たしかにね・・・(-_-;)

オモチャにはまったく興味のない”なつ”は
ひたすら雨降りのお外を眺めます。
(ネコにしか見えないけど・・・)

最後の日が雨降りでガレージでしか遊べなくて
残念だったね、L兄弟たち。
とってもおりこうだったね!また遊びにおいで~(^▽^)/