前回のブログで、オオカミの群の写真についてお話しましたので、関連して・・・
きょうは、Romeo(ロミオ)と呼ばれた1頭のオオカミのお話です。
【Romeoと呼ばれたオオカミ】
●出会い
Nick Jans(ニック・ヤンス)氏は、アラスカ在住の野生動物写真家です。
最初にヤンス氏がそのオオカミと遭遇したのは、アラスカのジュノーという場所にある、メンデンタール氷河レクリエーションエリアでした。
ヤンス氏は、妻のシェリーと愛犬のラブラドールレトリーバー Dakotah(ダコタ)と一緒に、家からほど近いその場所を、辺りが薄暗くなってきた時刻に散策していたそうです。
突然、氷の上に漆黒の毛皮をもつ若いオオカミが現れました。
ヤンス氏は野生動物写真家ですから、何年も野生のオオカミを追跡し、離れた場所から撮影してきた経験がありました。
そのため、目の前の黒いオオカミが完全に野生のオオカミであることはすぐに判ったといいます。
いくらオオカミに畏敬の念を抱き、何度も撮影していたヤンスさんでも、こんなにも近くで対峙したことは初めてだったため、とても恐怖を感じたそうです。
(そりゃーーそうでしょーよ!!)
●ダコタが・・・!
その時、ヤンスさんの愛犬ダコタはノーリードでした。
ヤンスさんが止める間もなく、ダコタは黒いオオカミに近づいていってしまいました。
ヤンス夫妻はバクバクする心臓を押え、ただ立ち尽くして見ていることしかできませんでした。
少し離れてお互いを見つめあう黒いオオカミとダコタ・・・
まるで、忘れていた友人の顔を思い出そうとしているように見えたとヤンスさんは振り返っています。
黒いオオカミは、決してダコタを威嚇するように唸ることはありませんでした。
ヤンスさんは慌ててカメラを取り出し、まったく予測することができなかったその光景を写真に収めたといいます。
そして、夫婦が息をつめて見守る中、黒いオオカミは森へと帰って行き、愛犬ダコタも夫妻の元に戻ってきました。
ヤンスさん夫妻とダコタは、オオカミの遠吠えを聴きながら急いで家に帰ったそうです。
ドキドキしてたでしょうねぇ~~!
●奇跡の交流
通常、縄張り意識の強い野生のオオカミが、近寄ってくる見知らぬ犬に危害を加えようとしないことは理論上 考えられないといいます。
ところが、黒いオオカミは最初から大変友好的で、まったく攻撃性がなかったといいます。
「まるで、空から舞い降りてきたユニコーンのように、ただ静かに穏やかにそこにたたずんでいた」
と、ヤンスさんが語っています。
犬同士だって、初めて会う時はお互いに警戒していて、その後少しずつ打ち解けていくことが多いのですから、ヤンスさんが驚いたのも無理はありません。
この出会いだけでも奇跡のような出来事なのに、奇跡はその後6年間も続いたんです!
●おおロミオ!!
翌週から、ヤンスさん夫妻は黒いオオカミを観察するようになりました。
黒いオオカミは、身体的な特徴からみて、2歳くらいだと思われました。
ある日、スキーヤーの女性が2頭のアフガンハウンドを連れて通りかかりました。
黒いオオカミは、ヤンスさんの愛犬ダコタにしたのと同じように、犬たちと穏やかに挨拶を交わしたといいます。
そして・・・
二頭の犬と野生の黒いオオカミは、一緒に遊び始めたというのです。
まるで、子犬の兄弟がするように、前脚を合わせたり甘噛みしたりしてじゃれ合う異種の動物たちの姿と、見事な野生の跳躍力によって異次元のような動きを見せるオオカミの姿を、ヤンスさんは口をポカンと開いて見つめていたそうです。
黒いオオカミを観察しつづけた結果、彼はすべての犬と人に友好的だということがわかりました。
そして、時に彼はヤンスさんの愛犬ダコタや、隣人の家のボーダーコリーなどの特定の犬に対して、まるで叶わぬ恋に悩む男子のような態度を見せたといいます。
そのため、ヤンスさんの妻が、黒いオオカミを「ロミオ」と名付けたのだそうです。
わたしは このエピソードを知ったとき、ふと
「何万年も前、人間に懐いて、今の犬の祖先となったオオカミは、ロミオみたいな子だったんじゃあないか・・・」
と妄想して、とても楽しい気持ちになりました。
●地域の人々との交流
やがて、ロミオは地域の人たちに知られるようになり、多くの人が愛犬を伴ってロミオの元を訪れ、心温まる交流をするようになりました。
とはいえ、どんなに攻撃性がないといっても、相手は野生のオオカミで、捕食者であることにかわりはありません。
そのため、ヤンスさんや近隣の人々は、ロミオとの間に一定の距離感を保つことだけは忘れませんでした。
民家や道路にロミオが近づかないよう、雪を投げつけたりしていたのだそうです。
感情に流されない、とても理性的な対応ですね。
ところが、ロミオのことが徐々に有名になるにつれ、近隣の住民だけでなく、わざわざ遠方から珍しい人懐っこい野生のオオカミを見ようとやってくる人が増えてきました。
ヤンスさんたちは、あまりに混みあってやかましい状態に危機感を抱いていました。
観光客たちの中には、相手が野生動物だという認識をまったく持っていないような人もいたからです。
時折、そういった人たちがあまりに唐突にロミオに接近したりするのを、ヤンスさんたちは非常に危険だと感じていたんですね。
ヤンスさんは、不慮の事故が起きないように、ロミオの傍にいるのが全く知らない人ばかりにならないようにと、近所の仲間と交代で常にロミオを見るようにしていたそうです。
幸いにも、ロミオは心配していたような問題は起こさず、いつも穏やかなままで、決して興奮して人や犬を襲うようなことはなかったそうです。
●論争
ヤンスさんが最初にロミオに出会ってから5年間、ロミオは決まって秋と冬には同じ場所に姿を現し、地域の人々とロミオの交流はつづいていました。
でもその陰で・・・
ロミオの人気が高まり、崇拝者が増えると共に、反対論を唱える人々の声も高まっていたんです。
「もしも子どもを襲ったりしたらどうするんだっ?!」
と、野生のオオカミが人里のすぐ近くにいることに対して恐怖と不安を抱く人々がいたのも無理はないでしょう。
犬ですら、怖いと思う人はたくさんいるんですからね・・・
アラスカ州では、ロミオを他の場所に移すべきかどうかという公開討論が熱く交わされるようになったといいます。
●突然の悲劇
けれども、ロミオは決して人間を襲いませんでした。
逆に、ロミオが人間に襲われたんです・・・・
2009年の9月、ロミオは また同じ場所に姿を現しましたが、その月の後半に突然姿を消してしまいました。
この地域に住むふたりの男性によって射殺されたのです。
彼らは逮捕され、罰金刑と数年間の保護観察処分となっただけでした。
近隣の「はく製業者」の工房からは、ロミオの見事な黒い毛皮が押収されたそうです。
ロミオを愛してやまなかった、ヤンスさんや地域の人々は、ロミオとの奇跡の交流があった6年間を形に残したいと、ロミオが歩いた場所に沿って記念のプレートを設置しました。
記念プレートを手にしたヤンス氏 |
ヤンスさんは次のように語っています。
"Love, not hate, is the burden we carry."
うーん・・・
日本語だと、なんと表現すればいいのでしょうか・・・
「憎しみではなく愛情が、よほどボクらを苦しめる重荷になっているんです」
なんか違うなぁ・・・素敵な日本語が思い浮かびません。
自分たちと同じ人間・・・それも同じ地域の住人によってロミオが射殺されたことに対する罪悪感。
もし、たくさんの観光客が押し寄せた時に、ロミオが神経質になったり興奮して、少しでも人や犬を威嚇するような態度を示していたなら、その罪悪感はそこまでヤンスさんたちの重圧にはならなかったかもしれません。
けれども、ロミオは決してそのような態度を取ることはありませんでした。
どんな時も、(仲の良い人たちに、あえて雪をぶつけられたりしても)
人や犬に対して愛情をもって穏やかに接していたのです。
その、ロミオの無償の愛が、この先もずっと 人々に重い贖罪の気持ちを抱えさせることになるのだろう・・・
というようなことをヤンスさんは言いたいのではないかと、わたしは解釈しました。
だから、大きく異訳するのであれば、
「ロミオがありふれた野生のオオカミだったら、こんなにも苦しむことはなかったのに!!」
というようなことになるかもしれません。
天国のロミオは、今も人間のことを好きでいてくれているのでしょうか・・・・
<今日のPet Hotel 11!>
朝の海さんぽ♪ |
あ~~~あ、Bちゃん、まだ眠いの~? ボスとチャコを食べないでねー! |
「え?何待ち?」 「Bちゃんのウンチ待ちでーーーす!」 |
全面的にチワっているチワックスの”なつ” 正規のチワワ、Kくんと並ぶと・・・ やっぱり脚が短いね(笑) |
あれー?Kくん、すごいじゃない! 引きこもるのやめたの~~? Kくん「だってだって・・・ボスたちが~・・・」 |
ボス「え?誰か呼んだぁ~~?」 ボス、チャコ・・・そこはKくんのおうちだよ (-_-;) |
お昼過ぎにやってきたCちゃんは 大きなBちゃんにもぜんぜん物怖じしません |
フツーに馴染んでしまいました。 小型犬の女子って意外と肝が据わった子が 多いのよねぇ(;'∀') |